ランナーズ・ジャーナル JAPAN (Runners-Journal.Jp)

事実に基づいた「真実のコラム」を掲載しています。今だからこそ伝えたい「本当のこと」をありのまま伝えたいと思います。

カテゴリ: レース解説

<解説③> 〜厚底シューズが齎した箱根駅伝の走り方&好走する条件〜

レース全体を観て感じたことの筆頭は、ナイキ厚底シューズの使用率だろう。区間走者全員がナイキ厚底シューズを履いていた区間があったことを思うと箱根駅伝を走る学生ランナー達から圧倒的な信頼を受けているのを証明したことになる。しかし、シューズ使用率は高いのに着用した選手全員が好走している訳ではないことから考えると、シューズを履き熟している選手が実力以上の好走をして上手くフィットしていない選手が逆に失速しているという印象を受けた。

失速してしまった選手の多くは、フォームが不安定。体幹の弱さが原因でシューズの性能を活かしきれていなかった。例を挙げてみると下記のような選手が失速していた。

・上半身と下半身の動きが連動していない選手。
・カラダを左右に揺らして(傾いて)走っている選手。
・踏み込み時間が長くバタバタ・ドタドタと走っている選手。
・左右の脚力差があるので地面からの反発力に差が生じて歩幅が噛み合っていない選手。
・前半にシューズのバネを使い過ぎてしまい、後半は脚へのダメージに耐えられない選手。

山下りでは、シューズの反発力を最大限に活かして「滞空時間を長くする」のがポイント。大きなストライドで一歩の距離を稼ぎながら走ると区間記録が良くなる。逆に山登りでは「滞空時間を短くする」ことで一歩一歩が速くなりエネルギーロスの少ない走りができる。それが、快走に繋がる。厚底シューズの出現により箱根駅伝の走り方も変わってきている。大きな反発力を受けられるというのが最大の武器となり選手に力を与えてくれている。その反面、シューズの性能を活かせる脚力を養っておかないとレース中盤以降に脚が止まってしまいフラフラな走りになってしまう。箱根の山上りや山下り区間だけではなく他の区間でもシューズの性能を活かした走りが出来ている選手と活かせていない選手との差が大きかったのは興味深い事実である。

厚底シューズの出現は、実績のある選手が好記録を出すことに役立つのは勿論のこと、実績などない選手が厚底シューズの力を借りて一気にレベルアップできることを証明している。

「トップレベルの選手と肩を並べて競い合える!」
「今まで憧れの存在だった選手に勝つチャンスがある!」
「このシューズを履けばエリート選手と同じように走れる!」

そう思える気持ちと「自分もやれるぞ!」という自信を全ての選手に平等に与えてくれた。それが厚底シューズが日本の長距離界に齎した最大の功労ポイントだ。速く走る為に必要な選手のモチベーションを高める効果があるシューズ。大きな歴史の転換期を一足のシューズが迎えさせた。この現象は、中学生や高校生の舞台でも確実に起こっている。厚底シューズが起こす奇跡の快進撃は、まだまだ続く。どんな記録が生まれるか期待して待ちたい。

<解説②> 〜優勝候補が本番で勝つ為に必要なこと〜
東洋大学、青山学院大学、東海大学、明治大学などが優勝候補として名前を挙げられていた中でレースの主導権を握ったのは、創価大学だった。先頭を走る創価大学に各大学は、代わる代わる必死の追走を見せるものの逆にその差は開くばかりだった。なぜ、あれほどまでに差が出来てしまうのか。なぜ、創価大学の選手は安定して走れるのにエリート選手を揃える強豪大学が失速していくのか。

「優勝候補」と呼ばれて嬉しくない選手などいない。優勝候補として恥ずかしくない走りをしようとモチベーションが上がる。日々の練習に対する取り組み姿勢も変わる。より意欲的になり、より限界点が高くなる。「みっともない走りはできない」と思えば思うほど必死に練習をして優勝候補に相応しい力を身につけようとする。普段以上に集中して練習をするから、どんどん記録を更新していく。「優勝候補」と呼ばれることで選手個々のやる気と走力が上がり、それがチーム力を強固なものにしていく。メディアから騒がれることでチーム力が高まるのは良くあること。強いチームができる過程ではメディアの力は最高の外的要因となる。その反面、「優勝候補」と呼ばれることで勘違いをしてしまうチームもある。自分達には勝てる力があると思い込んでしまう。心身共に最高の状態に仕上げて100%の力を出し切ってこそ優勝を掴めるのに「自分達には勝てる力がある」と勘違いしてしまったことで危機感が薄れてしまう。心の中に少しでも油断が生じてしまうと100%の力を出せなくなってしまう。勝負弱くなってしまう。諦めやすくなってしまう。筋肉の緊張感が取れて脚に力が入らなくなってしまう。体幹軸が緩み、腰が抜けたような走りになってしまう。それが、「優勝候補」と呼ばれていたチームが思わぬ失速をして優勝争いから後退してしまった原因となっている。優勝候補だった大学の選手で本来の走りが出来ずに不本意な結果になってしまった選手の多くがカラダを左右に揺らして走っていた。心の油断があったかもしれない。

近年、高校のレベルが上がり、エリートと呼ばれる層の選手が増えてきた。かつては、10人程度しかいなかったエリート選手が、今では、20人以上いる。年によっては、30人近くなることもある。分母が増えた分、複数の大学に将来有望な選手が散らばっていく傾向になってきた。ひとつの大学に名の知れたエリート選手が集まるのでは面白くない。各大学に均等に力のある高校生が同数程度加入する方が、学生長距離界全体のレベルが上がる。今回の創価大学のように「蓋を開けてみたら先頭を走っていた」という大学が増えることが箱根駅伝の魅力を増すことに繋がる。高校時代にレギュラーメンバーとして全国高校駅伝を走り活躍していなくても箱根駅伝で活躍している選手は少なくない。下手な実績が無い方が監督の言うことを純粋に受け止めてガムシャラに練習してくれるから伸びるという話をよく耳にする。選手の可能性は無限である。スーパースター選手を並べても勝てないのに実績がない選手を鍛えて作った雑草軍団が優勝する可能性がある。優勝候補でなくても勝つチャンスがある。下手に優勝候補と呼ばれない方が余計な雑音が聴こえないのでチームは順調に仕上がる。

来年は、創価大学をはじめ國學院大学や早稲田大学、更には、今年不発に終わった明治大学も優勝候補に上がってくる可能性は十分にある。「そうは言っても、やっぱり、優勝は、青学、駒澤、東海、東洋でしょ!」という声もある。その通りである。高校駅伝強豪校からの進学先として、青山学院大学、東海大学、東洋大学、駒澤大学の人気は、相変わらず高い。生徒本人よりも家族の方が人気大学への進学を希望する傾向は変わらない。高校生の本音は「強くて毎年上位争いをする大学に入りたい」だし、家族の本音は「有名監督やスター選手がいる大学へ入って欲しい」だ。大学側が求める逸材と選手が指導を仰ぎたい指導者とのベクトルが一致して、尚且つ、そこが家族が行かせたい大学であったなら、その選手は大学進学後も順調に成長するだろう。「なんとなく声を掛けられたから決めた」というのではなく、「ここで絶対に花を咲かしてみせる!」と覚悟を持って進学先を決めた選手がいれば、そのチームは、「優勝候補」の筆頭になっても動じることなく襷を繋いでいけるだろう。

<解説①> 〜創価大学が3分以上ものリードを守れなかった理由〜

 テレビ観戦していたチームメイト、学校関係者、大会運営者、メディア、実況担当者など全ての人が創価大学の初優勝シーンを観れる思っていた。3分以上のリードがあれば、余程の大ブレーキをしなければ逃げ切れると思っていた。もし、創価大学が”まぐれ”で先頭を走っていたなら「どうせ抜かれるだろう」と高を括って観ているので逆転されても驚きは無かった。「箱根駅伝の名門大学とは、力が違うから仕方ない」と心づもりをして観ていたし、1区で区間賞を獲得した法政大学が2区で大きく順位を落としたように「すぐに追い抜かされる」と気楽に見ていられた。優勝候補に上っていない大学がトップに出ると「落ちていく姿を期待して、抜かれるシーンを待っている展開」になるのが常だ。しかし、創価大学の選手達は大崩れしなかった。往路に続き復路の選手達も安定感ある走りは健在。不安要素を感じない逞しくて立派な走りだった。多少追い上げられても先頭を走る強みを最大限に活かして堂々と走っていた。だからこそ「このまま逃げ切ってしまうだろう」と多くの方が確信して疑わなかった。9区までの選手達は、完璧に近い走りでトップを独走していた。10区の選手も同じように笑顔で快走するだろうとゴール後の喜ぶ姿をイメージしていた。周囲の誰もが「このまま逃げ切って初優勝を飾る!」と思っていただろう。そんな雰囲気が周囲に漂っていたからこそ、アンカーを任された選手には今まで経験したことがない大きなプレッシャーがのしかかっていたのではないかと推察できる。プロゴルフツアーの最終日の最終ホール。2打差リードしていながら30㎝のウイニングパットが決まらずにまさかの大叩き。掴みかけていた初優勝を逃してしまった選手の姿と重なった。得体の知れない重圧に自分が自分でなくなってしまう。冷静だと思っていても全くカラダが動かなくなる。競技は続いているので、そのままプレーは続けているが明らかに普段のプレーとは違う。”あり得ないプレー”をしてしまう。絶対に入る距離のウイニングパットを外してしまう。「このパットを決めればプロツアー初優勝。数千万円の賞金を獲得出来る!」という今まで経験したことのない究極のシチュエーションが我を忘れさせる。

 人は、今まで経験したことのない状況下に身を置くと必要以上に緊張する。今まで見たことがない景色を見ると一時的なパニックを起こしてしまう。どのように振る舞ったらいいか分からなくなるからだ。このパットを入れたら優勝。見たことのない大金を手にする。そういう経験がない選手は、手が震えてカラダが固まってしまう。だからメンタルトレーナーは、イメージトレーニングを推奨する。ライバルに勝って優勝し、観衆に手を振るシーンを何度も何度もイメージさせて「初めて見る景色」を過去に何度も見たことがある景色として脳に認識させる。これが勝者のイメージトレーニングとして活用されている。駅伝も同じことが言える。この襷をゴールまで繋いだら優勝。しかもそれが箱根駅伝の総合優勝となれば、正気ではいられない。優勝候補に挙げられるような大学で優勝テープを切るイメージが出来ている大学なら無難にまとめられただろう。しかし、初めての往路優勝に続き、復路でも独走して初の総合優勝となれば頑張る気持ちとは裏腹に精神的に混乱しても当然である。

 人のカラダは、繊細だ。憧れを抱くのではなく現実的に箱根駅伝優勝を達成する明確なイメージが出来ていないとカラダが言うことを効かなくなるのは当然である。ただ、襷を繋ぐだけ。大快走などしなくていい。普段の練習通りに走って、ゴールまで襷を届けるだけ。それが出来なくなってしまうのが、箱根駅伝優勝の重みであり、優勝する難しさだと改めて気付かされた。違う視点から考えてみると、もし、2位との差が1分程度で走っていたら優勝できた可能性もあったと分析することも出来る。1分差よりも3分差の方が気が楽だと考えるのは、駅伝を走った経験がない方の発想。あるいは、余裕で走れるくらいの大差があった方が楽に走れるというのは、経験豊富な常勝軍団の選手である。箱根駅伝の出場回数が片手で数えられる大学の場合、3分以上の差があることで走り始めに迷いが生じてしまう。想像もしていなかった大差がつくと、一瞬、緊張の糸が切れて、それを仕切り直さなくてはいけなくなる。「必死に逃げるしかない」というシチュエーションと「普通に走れば余裕で勝てる」というシチュエーションでは、経験の浅い大学にとって後者の方がプレッシャーを感じる。1分くらいの差で襷を貰った方が、気持ちに迷いがなく「抜かれたら抜かれた時だ」と開き直って走れるので結果的に好走することができる。開き直れるシチュエーションの方が、潜在能力を引き出すことができる。やはり3分以上の差があるシチュエーションは、難しい。心に迷いが生じる。「自重してスタートしても大丈夫だろう。暫く走ってから少しずつビルドアップしていこう」。そんな気持ちが心に芽生えてしまうと逆にリズムを崩してしまう。結果的に勢いに乗れないまま最初から最後までカラダが重く感じて走ってしまう。これが、駅伝独特のメンタルとフィジカルとのネガティブ相互関係である。

 誰もアンカーを走った選手を責めることは出来ない。彼は、精一杯頑張った。あの瞬間に出来る最大限の力を発揮して、最高の走りをしようと全力を尽くした。それ以外のなにものでもない。ただただ、創価大学の選手達の健闘を称えたい。創価大学の選手達よ。絶対王者や優勝候補の大学を抑えての準優勝。堂々と胸を張って共に戦ったチームメイトと2021年の箱根路を沸かせた自分達の頑張りを誇りにして来年へのステップにして欲しい。

女子の優勝とは違い、選手7人が強さを発揮したという点では、あっぱれと言える。

1区から優勝射程圏内でレースを進めて、3区で先頭に出る。

後続との差を約1分に広げて後半への貯金をつくる。

その後は、貯金を使いながら逃げるだけ。

アンカーでは、仙台育英が追ってくる展開でも慌てることなく貯金を有効利用。

徐々に差を詰められながらも安定した走りをして堂々と逃げ切った。

ざっと説明すれば、そんな感じで世羅の優勝を語ることができる。

しかし、今回の優勝は、他チームが本領発揮できなかったことが大きな要因だ。

<男子レース解説>
世羅の優勝は、1区を終えた時点でほぼ決まっていたと言って良い。1区を終えた時点で洛南と世羅の差が12秒。佐久長聖と世羅の差が4秒。仙台育英と世羅の差が1秒。ここで最低でも20秒。留学生を擁していない学校は、30秒から40秒の貯金を作らないと事実上、優勝は見えてこない。留学生に襷を渡す2区を終えた時点での秒差は、留学生を擁しない佐久長聖と世羅の差が12秒。洛南と世羅の差が6秒。この秒差で襷を繋いだ世羅に軍配があがるのは当然である。世羅の4区を走った新谷の走りは不安定そのものであったが、それは、優勝というプレッシャーがあるが故のオーバー・ジェスチャー。主将である自分がチームに迷惑を掛けたくないという思いからの”言い訳”を用意しただけのことである。それでも十分すぎる貯金があるので襷はトップのまま繋がれていく。その後も全く危なげない走りでトップを維持してゴールテープを切った。他校が優勝を狙うなら、やはり1区で大きな貯金を作れる選手を育てなければならない。あるいは、1区と2区で1分差をつけて更に5区・6区・7区にも13分台選手を配置できるチーム力が必要。今大会も幾つかのチームに先行するチャンスはあっただけに残念であった。

留学生を使うことの賛否は、様々な議論がある。それについては、ここでは述べないが例年以上に大きな力の差がついた背景には、やはりナイキ厚底シューズの影響がある。日本人よりもアフリカ勢の方がナイキ厚底シューズの力を得られる。それは、何故か。元々、アフリカ勢がフルマラソンで2時間を切る為に開発されたシューズである。骨盤が前傾しているアフリカ勢に合わせて作られたシューズをアフリカ勢が履いたら大快走をするのは当然と言えば当然である。今回の駅伝では、日本人選手による大幅な記録更新は見られなかった。しかし、留学生は、区間新記録の大快走をした。それには、シューズの特性を活かせる体型が関係している。ナイキ厚底シューズには、向き不向きがある。それを決定づけるのは、骨格の違い。前傾姿勢を保った走り。接地時に膝下が伸びる走り。それが自然と出来る選手には、大きなアドバンテージが得られる。今回、ナイキ厚底シューズを履いた留学生は、例年以上に速く・強かった。

世羅が優勝できた背景には、世羅という地域性がある。小さな町であるが故に街を挙げての全面的なバックアップがある。高齢者の多い地域。新型コロナウィルスへの感染を危惧する反面、高齢者がステイホームしていれば、選手達は気兼ねなく”自主練習”が出来る。また、山の中に作られたクロカンコースは、一般人の往来はない。山に集合して山で解散すれば、全く人目を気にせずに練習が出来る。その利点は非常に大きい。学校が休校になっていても全く関係ない。首都圏や大都市にある高校の生徒は、思うように”自主練習”が出来なかった。自粛警察の目があり、2~3人でジョギングすることさえ出来なかった。自粛要請期間中の”自主練習”の違い。その差が、今回の結果の差になったと言える。

世羅の選手個々の力に疑いはない。留学生一人に頼らない総合力があるから優勝することが出来た。10回目の全国優勝。素晴らしい実績であるが、過去の先輩達が築いてきた全国優勝とは、別物だと考える世羅OBもいる。「自分達がやってきたこと。自分達が成し遂げたこととは、重みが違う」と感想を述べるOBは少なくない。「正直、手放しに喜べない。洛南や佐久長聖や須磨学園の方が立派に見える」。そう語るOBの気持ちを考えると複雑な思いがする。

国際交流目的。最新型のギアを着用する。特別な練習環境がある。時代の流れに乗った学校が全国優勝をする。今年、13分台ランナーが多数生まれたことが話題になる一方で留学生との力の差も広がっている。テレビに映るくらい実力がある上位校には、ナイキをはじめとしたスポーツメーカー各社が専属契約をして最新ギアの無償提供など強力なサポートするが、中堅校や下位校は、自力で勝負しなくてはならない現実。留学生という大砲を擁する上に様々な面で恵まれている学校に勝つ為には、誰からも干渉されずに練習できる環境とハイスペックギアを調達できるバックアップ体制が必要。それが無ければ、世羅の全国優勝回数は、どんどん増えていくことになる。

世羅だけではない。教育の一環という建て前があるので一見平等にチャンスが与えられていると思いがちだが、実際には、不平等な戦いを余儀なくされている。留学生をひとりの高校生として扱う平等があるが故の不平等。強豪校に与えられている特別なサポート体制。一般の高校生とスポーツエリート校の選手との日々の生活の違い。学校教育下での不平等は沢山ある。それを理解した上で男女アベック優勝を果たした世羅高校の快挙を称賛したい。

昨年は、仙台育英が男女アベック優勝。

今年は、世羅が男女アベック優勝を果たした。

同じ男女アベック優勝でも、観て感じた印象は、まるで違う。

テレビ観戦した駅伝ファンに感動を与える走りをしたのは、昨年の仙台育英。

正直に言ってしまえば、今年は、素直に感動できないレースだった。

<女子レース解説>
まず、女子のレースを観て多くの方が感じたことは、留学生の強さだろう。「結局は、留学生が快走することによって勝敗が決まるのか」。そう痛感した方は正しい目を持っている。世羅は、高校駅伝の歴史において誰もが知る名門中の名門。その名門校が、男女共に留学生の力を借りて伝統を守っている。特に女子のレースは、アンカーが7人抜きして逆転優勝。日本人選手との力の差を分かりやすく説明すると…

世羅のアンカーのテレシア選手の区間記録は、14分37秒
区間3位の米澤奈々香選手(仙台育英)の記録は、15分37秒。(1分差
区間11位の藤田あい選手(小林)の記録は、16分38秒。(約2分差
区間29位の南梨花選手(成田)の記録は、17分18秒。(約2分40秒差
区間37位の高橋花和選手(旭川龍谷)の記録は、17分37秒。(3分差
区間47位の平井玲選手(高松工芸)の記録は、19分58秒。(約5分20秒差

これだけの力の差があるのは、どう考えてもフェアではない。学校教育の一環として行われている全国高校駅伝。そこに五輪選手を連れてきて走らせている。まさに勝利至上主義だ。そう言われても仕方がないくらい大きな差がある。アンカー5㎞区間を区間10位前後で走る選手は、素晴らしい選手である。力があるし実績もある選手だ。その選手と2分もの差があるのでは、もはや正当なレースとは言えない。駅伝ファンが素直に喜べない理由は、まさにアンフェアなレースだったからだ。4区を終えた時点で完全に優勝争いから遅れていたのに「よもやよもやの大逆転」。普通なら最後まで目が離せない展開に盛り上がるところだが、今回は、逆にしらけてしまった。仕方ないとは言え、余りの力の差に高校駅伝本来の面白さが薄れてしまった。残念でしかない。留学生の扱いについて論議するつもりはないが、今回ばかりは、歯がゆい気持ちでレースを見終えた。留学生の力を借りずに優勝争いを展開した仙台育英、北九州市立、立命館宇治、須磨学園の健闘を心から讃えたい。

〜男子編に続く〜

男子レースは、波乱の幕開けとなる予感に溢れている。

5000m高校歴代1位と2位の選手が激突する面白さが、まず最初の見所。

東京農大二の石田と佐久長聖の伊藤選手の走りには大いに注目が集まる。

そこに仙台育英の吉居らも加わると言う展開は、誰もが安易に想像できる。

しかし、優勝候補の仙台育英・佐久長聖・世羅よりも他校が先行する可能性がある。

余計なプレッシャーが無い分、伸び伸びと走れる選手が1区を制するだろう。

上り坂への適性、コースとの相性、一発勝負の調整力、本番での爆発力。

それらを”襷をかけている瞬間”に発揮できた選手が快走する。

どの学校も1区から流れに乗りたいのは言うまでもない。

昨年の八千代松陰のように1区で流れに乗ってしまえば、レース後半まで流れてしまう。

その展開にしたいのは、佐久長聖と東農大二、そして、九州勢だ。

九州勢は、後半に強さを発揮する展開が得意。

昨年も最後の最後で宮崎日大と自由ヶ丘が8位入賞に飛び込んだ。

1区で大きな遅れをとらなければ入賞圏内に九州勢が複数入ることもあり得る。

九州勢は、優勝候補に上らない年ほど入賞数が増える傾向があるのも面白い。

1区で上位に位置して流れに乗りたいのは、須磨学園と洛南の近畿勢だろう。

この2校は、留学生を擁していない学校の1位を獲れる潜在能力がある。

佐久長聖や東農大二よりも上位を走っても何ら不思議ではない。

須磨学園と洛南が1区を上位で襷を渡せるかに期待したい。

全ての出場校が経験したコロナ禍での部活動の在り方が勝敗を分ける点にも注目。

休校期間中も気兼ねなく練習が出来た世羅・佐久長聖・仙台育英が有利なのは事実。

やはり、自粛要請が出ている期間でも普段通りに近い練習をしていた学校は強い。

監督官庁からの指示に真面目に従い、一定期間チーム練習が出来なかった学校は不利だ。

その穴を埋めることが出来たかどうかを走りで観れる楽しさが今年の見所でもある。

そして、何よりもナイキ厚底シューズを履き熟したチームが勝利に近づく。

厚底シューズの力を最大限に発揮して、その恩恵を受けたチームが高校最高記録を出す。

見応え満点な男子のレースは、あっという間に2時間が過ぎるだろう。



女子の優勝争いは、神村学園、仙台育英、立命館宇治の3校が競う予想するのが妥当。

しかし、1区で区間賞に近い走りが出来れば、須磨学園にも可能性がある。

須磨学園も3強に引けを取らない強力な布陣で全国優勝を狙っている。

その他、総合力で上位に来る可能性が高いのが北九州市立。

筑紫女学園を破り代表になった力は本物だと言える。

アンカーで大きく順位を上げる可能性があるのが興譲館と大分東明。

5区に留学生を配置する強みは、多少の遅れを挽回できる大きな強みとなる。

「アンカーに襷を繋げばいい」という心的有利な状況は他区間の快走を生むだろう。

今年の女子レース一番の見所は、千葉県代表・成田の走り。

今年の成田は、1区の小坂井が区間賞を獲ることもあり得る。

1区小坂井、2区山﨑と5000m15分40秒台選手を並べた超前半型の采配。

1区と2区の勝負なら、出場校中最も力があるのは、成田である。

それは、優勝候補に挙げられている強豪校の監督も認める。

3区鈴木、4区横澤、5区南の1年生トリオは、全中陸上への出場実績もある。

ここ数年で何度も上位を走るレースを経験しているが、ゴールでは全て入賞圏外だった。

今回は、1区で区間賞を獲得すれば最終5区まで先頭で逃げる可能性も十分にある。

ブレーキさえなければ間違いなく成田は、レースを支配するだろう。

成田の勝負の分かれ目は、アンカー勝負になった時。

仙台育英の米澤、立命館宇治の村松、須磨学園の石松は、実績十分。勝負強い。

そして、神村学園のシンシアなど強力な留学生複数人が高速で飛ばす。

ざっと数えて成田のアンカーよりも強い選手は10人以上いる。

強豪校の選手達に負けない気持ちの強さがあるかどうか。

今年もアンカーで入賞を逃すか、前半の貯金を活かして悲願の入賞なるか。

昨年男子レースを盛り上げた八千代松陰に匹敵する成田の走りにも注目して欲しい。


 

男女10000mで日本新記録が出て大きな盛り上がりを見せた2020日本選手権長距離種目。

東京五輪代表内定者を出すことができて陸連が望んでいた成果を無事に出すことができた。

しかし、それは、偶然の賜物であると敢えて言っておきたい。

選手は、この試合に向けて最大限の努力をしてきた。

試合でも五輪切符を掴む為に全力を出して走り切った。

すべては、選手の五輪に懸ける想いが数々の好走を生んだ。

陸連が計画的に強化をしてきた成果ではない。唯一の成果は、この場を作ったこと。

そもそも、新型コロナが無ければ、この時期に日本選手権を開催することは無かった。

上半期に体を休ませることができた分、この時期に好調を維持して試合に臨めた。

体力的な要素、日程的な要素、気象条件的な要素が揃ったからこそ生まれた記録である。

東京五輪が開催されていたとしてもここまでの成果は出なかっただろう。

自国開催の五輪で世界の壁に跳ね返される散々な結果だったと予想するのが妥当だ。

しかし、幸いにも良い流れで来年を迎えられる雰囲気になってきている。

今回の選手達の頑張りが東京五輪本番でも100%発揮されることを期待したい。


<女子5000m>
序盤はスローペースとなり「また時代を後戻りさせるのか…」と若干の危惧もしたが、さすがに廣中選手はラスト1000m勝負にはさせたくなかったのだろう。2000m過ぎからペースを上げて3000mからはエンジン全開でビルドアップしていった。廣中選手と田中選手とのマッチレースは、結果的に1秒差で田中選手が優勝し五輪代表内定を獲得した。両者は、後半の2000mを5分40秒台で上がる強さを見せた。日本国内では近年珍しい最後まで見応えのある素晴らしいレースだった。印象に残ったのは、ゴール後の表情。惜しくも2位となった廣中選手は、ゴール後、田中選手に歩み寄り握手をしようとしたが、その意味が分からなかったのか、あるいは、余裕がなかったのか。田中選手は、廣中選手の歩み寄りを受け入れることなく苦しい表情をしたままだった。ゴール後の表情、仕草、発言を基に分析すると本当の勝者は、レースの9割以上をつくった廣中選手かもしれない。ゴール後、明らかに余裕があったのは2位の廣中選手。五輪代表内定を獲得した田中選手には笑顔もなければ、他の選手の健闘を称える余裕もなかった。表情だけ見れば、どちらが勝者か分からなかった。それくらい田中選手にはプレッシャーが懸かっていたというのも理解できる。唇の状態は夏からずっと荒れたまま。内臓疲労かストレスによるものか。栄養管理は大丈夫なのかと心配になってしまう。かつて日本代表として世界の舞台で活躍したある選手は、若手選手の唇が荒れているのを見ると「栄養管理は大丈夫?余計なストレスを溜めていない?お腹が痛くなったりしない?」と声を掛けて、すぐに栄養士とメンタルトレーナーを紹介した。そういう細かなことまで気が回るスタッフが田中選手の周りにいるのだろうか。それだけが心配である。真面目な選手が真面目が取り柄では世界で戦えない。笑顔が無いトップアスリートなど居ない。1位でゴールしても笑顔がなく疲れ果ててしまうくらい自分を追い込んでいる田中選手には、コンディショニングサポート担当が必要。800mのレースでゴール直前で転倒してしまったのも躓いたからではく神経系の問題だというのは明らか。無抵抗に頭から転倒しているのも気になる。田中選手の管理を親任せにすることなく専属のコンディショニングサポートスタッフをすぐにでも用意してあげて欲しい。代表内定については、陸連も頭が固い。誰がどう見ても廣中選手の成長が著しいし、レースを組み立てたのは明らか。田中選手に代表内定を出するなら「レースを組み立てる能力と積極性」を条件にしなければ公平性は保てない。「1500mと3000mで日本記録をつくった田中選手の方が力が上だ」という先入観があるから冷静な判断が出来ない。1位を獲得するのが内定条件なのは分かる。だとしてもレースの9割以上を一人で組み立てた廣中選手にも代表内々定を与えるべき。それでこそ選手は、頑張って走った甲斐がある。選手は消耗品であることを忘れてはならない。毎回、100%全力で走らせていたら選手生命は短くなる。余計な全力疾走など必要ない。廣中選手には、もう余計な試合を課す必要はない。五輪本番での伸びしろをつくる為にも全力疾走は、五輪本番だけに専念させるべき。もう一度言っておきたい。選手のカラダは消耗品である。選手が神経をすり減らしてまで行う無駄な競り合いに生産性はない。五輪本番を見据えた戦略的なコンディショニングとレースマネージメントを陸連には期待したい。


<男子5000m>
レースを解説するまでもなく坂東選手の強さが光ったレースとなった。坂東選手の力は本物だし、高岡寿成選手以来の大型ランナーだと期待が持てる。特徴は、高身長なのにピッチ走法で走ること。大きくストライドを広げてバネを使って走るのではなく身長の割にチョコチョコと刻んで走ることでエネルギーロスの少ない走りを実現している。それが後半までエネルギーを温存できる利点となっている。今後の伸びしろを考えると次回の五輪までには、世界レベルの走りが出来ているかもしれない。坂東選手だけでなく日本人が5000mで世界レベルになるかは、今のところ先が見えない状態だと言って良いだろう。今回も見せ場を作った大学一年生の吉居選手がラスト200mまで1位争いに絡む走りをしていたら男子長距離界の未来は本当に楽しみになったが、まだ、あと一歩力が及ばなかった。もう暫く時間を掛けて5000mのスペシャルの登場を待ちたいと思う。


<女子10000m>
新谷選手の一人舞台であるのは分かっていた。しかし、その舞台をチームメイトの佐藤選手が演出したところから感動物語が始まったと言って良い。新谷選手が強いと言っても1周目から一人で独走するのはレース後半の伸びを欠く要素になる。出来るなら1000mでも2000mでもペースメイクをしてもらい力を温存させて欲しいというのは、日本記録更新を期待する者なら誰でも思うことだ。絶妙なペースメイクだった。1000mを3分02秒。2000mを6分08秒。ここで走りに余裕ができたのは間違いない。非常に上手いペースで佐藤選手は走ってくれた。まさに立役者になってくれた。そして、そこからの新谷選手は強かった。一人舞台は圧巻であった。新谷選手が強過ぎて30分20秒という記録の価値が分かり難くなっている感もある。単純に考えた方が、その価値が分かる。5000mを15分10秒ペースで2回走る。もっと分かり易く説明すると…新谷選手は、前半の5000mを15分07秒で通過した。この日、5000mを走った田中希実選手の優勝記録は15分05秒。2位の廣中璃梨佳選手が15分07秒。5000mの優勝争いをした後、そのままのペースで更に5000m走り続けたことになる。5000mに出場した選手達は、新谷選手の5000mのラップを聞いて鳥肌が立ったことだろう。5000mを2回。15分07秒と15分13秒。この記録よりも速く走れる日本人選手は、今現在、片手で数えられるくらいしかいない。このように説明すれば新谷選手の実力と価値を理解して頂けるだろう。過去の記事で「新谷選手は金のために走っていない」と紹介した理由は、そこにある。所属企業やスポンサー企業が新谷選手の実力と価値を本当に理解しているとしたら新谷選手の年収は1億円以上なくてはおかしい。当然の金額だ。新谷選手には、1億円以上貰う実力と価値がある。新谷選手への注目度と新谷選手が生み出す経済的効果を考慮すれば、推定年収は2億数千万円と算出する専門家もいる。それが、「新谷選手はお金の為に走っていない」と記事にした理由となる。女子の日本人長距離選手としてトラック種目のみで年収が1億円を超える選手は新谷選手が初めてになるはずだ。この日、新谷選手が成し遂げた30分20秒という大記録の価値を日本陸連は勿論、スポンサー企業にも真剣に理解して欲しい。新谷選手の走りに対する追記として…2位以下に1周差をつけたレースは、過去にもある。自分以外の選手全員を周回遅れにした。あの時から既に新谷選手の力は群を抜いていた。他の選手達がナイキの高性能シューズの力を借りて自己記録を更新する快走をしても尚のこと周回遅れにされてしまう現実を他の日本人選手達も理解をして実業団選手と呼ばれるに相応しい走りを欲しいと強く願う。


<男子10000m> 
新谷選手の快走に沸いた女子10000mよりもレース全体が面白かったのが男子10000m。役者が揃うと自重したりなどしない。兎に角、次から次へと日本人トップに出るレース展開は見応えがあった。鎧坂選手、大迫選手、田村選手、伊藤選手、相澤選手などが代わる代わる日本人トップに出てペースを落とさない展開は本当に面白さがあった。田村選手は、調子の良さを感じていたからこそレース中盤で足を使い過ぎた感は否めない。勿体なかった。積極性は時として仇になる。我慢して我慢して我慢して機を伺うことも大義を果たす為には必要。中盤で足を使わないでジッとタイミングを待っていればラストまで優勝争いに加われた可能性もある。潜在能力的には、27分15秒を切る力は十分にある。準備をして待っていればチャンスは必ず訪れる。田村選手が日本記録を塗り替える日が来ると期待をしたい。レースは、8000mを過ぎてからが最も見応えがあった。相澤選手と伊藤選手の壮絶な走りは、かつての日本男子長距離界を彷彿させる見事な走りだった。伊藤選手の粘りは半端ない。普通なら気持ちが折れてしまう状況でも復活して先頭を追いかける執念。そういう気持ちを持った選手が現在の日本男子長距離界にもいるというのが未来を明るくする材料になる。伊藤選手は、同じような好条件下でのレースに恵まれれば田村選手同様に27分15秒を切る力は十分ある。あの執念があれば、いつか必ず「かけっこの神様」は微笑んでくれるだろう。体を揺らしてまで前へ行く気持ちがある選手に上限はない。伊藤選手に欲しいのは、体の軸をブラさずにスピードを上げる体幹の強さ。スピードアップした時にストライドが安定しなくなる癖があるのでスピードを上げ下げする度にストライドがバラバラになる。これは、大きなエネルギーロスとなっている。気迫に溢れた闘志むき出しの走りが長所である一方、その走りではエネルギー消費も大きくなる。体を揺すってまでしてスピードを上げるのはラスト勝負のみ。それ以外はフォームを崩さずにピッチを上げるだけでスピードの変化に対応できるようになれば強さは倍増する。伊藤選手が更に強くなった姿を見てみたいと素直に思えるくらい人の心を掴む走りをする魅力にあふれた選手。再び日本記録更新に挑む日が来るのを期待して待ちたい。優勝し東京五輪代表内定を勝ち取った相澤選手は、腿の使い方が上手。走った中で一番フォームが安定している。鎧坂選手、大迫選手、田村選手のようにストライドを延ばしてバネを使って走るのではなく同じフォームのままピッチ数を上げてスピードの変化に対応できるのが一番の強みである。途中、苦しい走りに見えた瞬間もあったが、体を揺らして無理に追いつこうとしなかった分だけラスト1000mからの力が残っていた。足首のキック力で走るのではない。太腿の力で走れる選手。ある意味、日本人離れした足の使い方をする選手である。実にエネルギーロスの少ない走りだ。勢いとタイミングさえ合えば、おそらく27分05秒程度まで記録を更新できる可能性がある。1周につき0.8秒ラップを速くするだけ。不可能な記録では無い。狙える時には遠慮なく、そして貪欲に記録を狙いに行って欲しい。男子10000mで好レースが見れたことは、今後の日本男子長距離界の未来を明るくする第一歩となるだろう。


最後に言いたいことは、多くの皆さんも感じた通り「実況の酷さ」だ。

会場内でのアナウンスは、タジタジのバラバラ。

言葉に詰まるから言葉を発するタイミングがズレている。

ここぞというタイミングでアナウンスするから選手の背中を押す力になる。

ここぞというタイミングでアナウンスするから観ている者の心が高ぶり躍る。

言葉の力。声のマジック。それを意識して当事者の心を読むことで絶妙なセリフが出る。

ただ、レース実況するだけなら、プロのアナウンサーに実況して貰う方が心地良い。

プロのアナウンサーでないなら、担当者は、もう少し勉強した方が良いだろう。

常識として覚えておいて欲しいのは、1周毎のラップに「セカンド」は不要。

ペースメイクをしている外国人選手の為に英語で伝えているのだと思うが…

66秒と言う際は、数字のみ伝えれば良い。秒を訳して「セカンド」と言う必要はない。

その理由が分かるだろうか。何故なら、それが秒単位なのは分かっていることだから。

「ミニッツ」ではないし「アワー」でもないのは、言わなくても分かることだ。

多分、海外留学や海外生活をしたことがない方がアナウンスをされていたのだと思う。

いや、もしかしたら陸上の経験が無い方なのかもしれない。

陸上経験者なら誰でも分かっている常識。それは「秒」を言わないで伝えること。

1分3秒は「63!」、1分12秒は「72!」、1分36秒は「96!」1分40秒は「100!」。

いちいち秒をつけて言わないし、省略することは業界の常識である。

それは英語にした時でも同じである。数字のみを伝えれば良い。「セカンド」は不要。

勿論、担当している方々への感謝の気持ちは忘れてはいけいないし敬意を持つことも大事。

それを理解した上でアナウンス担当者の質を高める努力を大会運営者に求めたい。

大会運営に携わる者の「小さな努力」が、一発勝負に懸ける選手に「大きな力」を与える。

今後の陸上界の発展の為にも、来年以降の大会に是非活かして欲しい。

今だからできること!それは、イメージトレーニング!

ただ、漠然と練習をしているだけでは上達しない。

明確なイメージがなくては、どこを鍛えた方が良いか分からない。

自分が理想とするレース展開をイメージ出来るようになれば自ずと走りも変わる。

各カテゴリーのトップ選手の走りを見て思わず「凄い!」と唸る走りを見つけよう!

1.アメリカのエリートレース
2.日本選手権
3.日本インカレ(学生選手権)
4.インターハイ(高校総体)
5.全中陸上(中学体育大会)

まずは、結果を見て欲しい。

日本インカレ、インターハイ、全中陸上の優勝記録(日本人トップ)は4分23秒台。

この現実をどう見るかも一考に値する。

そして、日本とアメリカとのレベルの違い。

それぞれのレースには、アフリカ勢は入っていない。

しかも、アメリカのトップ選手すべてが揃ったレースではない。

中学・高校は、日本の方がレベルは高い。

しかし、日本の場合、早熟で終わる選手が多い。

アメリカは、大学生になってから成長して一気に記録を短縮する選手が多い。

それを踏まえた上で走り方、体型、カラダの使い方などを研究すると面白い。

積極性、主導権争い、スパートのタイミング、ラストのキレなど見応えがある。

注目ポイントを意識しながら「走り方」を見比べてみると学べることが多い。

今だからできることとしてイメージトレーニングを積極的に取り入れてみよう。

<Payton Jordan Invitational Women's 1500m HEAT1>
 (Jessica Hull vs Karissa Schweizer: 1500m Showdown by Flo Track)
1. 4:12.08
2. 4:12.10
3. 4:12.93
4. 4:13.20
5. 4:13.77
6. 4:13.79
7. 4:14.62
8. 4:15.47

<2019日本選手権女子1500m決勝>

(
女子 1500m 決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟)
1. 4:15.79
2. 4:16.23
3. 4:16.45
4. 4:16.52
5. 4:17.46
6. 4:18.52
7. 4:19.60
8. 4:20.33

2019日本インカレ陸上 女子1500m 決勝>

(
2019日本インカレ陸上 女子1500m 決勝 by aoshin)
1. 4:23.02
2. 4:23.35
3. 4:23.66
4. 4:23.79
5. 4:24.72
6. 4:25.59
7. 4:27.51
8. 4:27.74

<2019インターハイ女子1500m決勝>

(2019全国高校総体 女子1500m 決勝 by TM_PP)
1.  4:10.99 (留学生)
2.  4:12.46 (留学生)
3.  4:14.46 (留学生)
4.  4:23.13
5.  4:23.16
6.  4:23.36
7.  4:23.53
8.  4:24.07
9.  4:25.33
10.4:25.37

<2019全中陸上女子1500m決勝>

(
全中陸上 女子1500m決勝 2019.8 大阪 by TR MV)
1. 4:23.47
2. 4:25.34
3. 4:26.20
4. 4:26.97
5. 4:27.28
6. 4:29.57
7. 4:31.58
8. 4:31.94

<女子選手の分析>
現時点で、日本女子マラソン界の頂点にいるのは前田穂南選手であるのは間違いない。低迷している女子マラソン界の中で際立った強さを見せつけたレースとなった。前田選手の潜在能力からするとMGCでの走りは、おそらく60%〜70%程度の走りだったはずだ。レース後のインタビューに応える姿を見ていると「後半失速してしまった。自分の力を出し切ることができずに残念だ」という感想を述べていたことから、「後半、もっと走れる」という強さを感じることができる。他の選手が、ゴールにたどり着くのがやっとという状態を見れば、前田選手の力が圧倒的なことは良く分かる。2位の鈴木選手、3位の小原選手も良く頑張ったと思う。立派に完走をしたと言って良い。しかし、勝負にはなっていない。あの走りでは、五輪本番は、良くて15位が精一杯である。勝負にならない。特に鈴木選手の走りが、残念であった。男子選手の分析でも触れたように、東京五輪のコースは、バネを使って走る選手には向かないコースだ。それを見越してかどうか推測しかねるが、本来の天性のバネを使って伸びやかに走る鈴木亜由子選手の良さが消えた走りとなっていた。ストライドが極端に狭く、上に跳ねて走る効率の悪いフォームになっている。今の鈴木選手の走りは、前田選手のように前方方向への推進力を生み出していない。おそらく、走り込みをする過程で、ペースを落としてゆっくり長く走る練習をしてきたのだろう。その結果、鈴木選手の良さが無くなってしまった。鈴木選手の指導陣へ向けてアドバイスをしておきたい。もし、天満屋の武富監督が、鈴木選手の指導をしていたら、天性のバネを活かした伸びやかな走りのまま走らせていただろう。間違いなく、前田選手と競り合える選手に育てていた。本来の良さを活かしながら、マラソン選手としても能力を開花させていただろう。それが指導者の差、指導力の差である。本当に勿体ない。このままでは、あと1レースか2レースを走れば、大きな故障をして走れなくなってしまう。そう危惧してしまうくらい鈴木選手の走りは窮屈で非効率で良さが消えた走りであった。4位以下の選手達は、レースにすらならなかった。長期間準備をしても、あの程度の走りしかさせられない。マラソンの指導法をしらない。それもまた指導力の差が結果の差となっている。小出監督、藤田監督、鈴木秀夫監督がいない現在の陸上界には、天満屋の武富監督しかマラソンを指導できる指導者はいない。その武富監督が指導する前田選手でさえ、世界との差を考えると入賞がやっとというのが現実である。現時点で日本人選手がメダルを獲得できる程、世界のレベルは低くない。そんなに甘くはない。2時間10分台で走れる選手が出てこない限り、世界との差は縮まらない。それは、男子マラソンの現状と同じである。世界との差は、5分あると考えてよい。MGC男子の優勝記録は、2時間11分台。日本記録は、2時間5分台。夏の暑さを考慮して6分程度自己記録から遅れると仮定をすると、2時間1分~2分で走る世界のトップ選手達は、2時間7分~8分台でゴールすると予想できる。アジアの暑さにアフリカ勢は対応できる。2008年に開催された北京五輪でも酷暑の中、男子マラソンの優勝記録は、2時間6分32秒だった。東京五輪でも、それくらいの記録が出ても何らおかしくはない。女子マラソンについても、世界との差を考慮して優勝記録を予想すると、猛暑の東京でも2時間22分~23分の記録が出てもおかしくはない。もっと、具体的な話をすると、東京五輪本番、海外の有力選手は、絶対に前に出てこない。誰も前に出てこないから、前田選手をはじめとする日本人選手は、自分達が前に出てレースを引っ張る展開になるだろう。よほどの戦略を練らない限り、前田選手は、今回と同じように15㎞を過ぎたあたりから前に出ていくだろう。自分のリズムで走ろうとする。しかし、海外の有力選手達は、それを予想している。待っていたとばかりに前田選手をペースメーカーとして利用する。20㎞、25㎞、30㎞とずっとついていく。そして、前田選手がバテて来たタイミングを見計らって前に出ていく。海外の有力選手達は、兎に角、勝つレースをする。35㎞でも40㎞でも日本人選手を利用するだけ利用して最後の最後に勝つ。スローペースで走っても、ハイペースで走っても、アフリカ勢・中東勢・欧米勢が有利な状況は変わらない。日本人選手がすべきことは、ただひとつ。代表選手の中の一人が「おとり役」となってレースを引っ張り、前田選手の脚を後半まで休ませることだ。設楽選手がしたレースのように、女子代表選手の一人が、ダメもとで飛ばしていくことで、他の二人の選手の体力を温存できる。海外の有力選手を慌てさせるレースをしない限り、日本人選手の上位入賞はない。チームJAPANとして、一人が他の二人を活かす走りをすれば、ダブル入賞も見えてくる。それくらい国を挙げて勝負に徹底したレースをしないと勝ち目はない。MGCを終えて日本人選手が何をするべきかが明確になった。すべきことはシンプルである。誰か一人を入賞させるために他の二人がチームプレーに徹すること。それが出来たら日本国民が喜べる結果が出せるだろう。代表選手三人が自分のことだけを考えて別々のレースをしたら三人揃って惨敗となる。誰か一人を活かす走りが鍵となる。これから決まる三人目の代表選手にも注目をしたい。


 

まずは、このシーンを良く見て欲しい。(下をクリック)

レッドソックス上原浩治 入場シーンがかっこよすぎる

2分50秒間、実況中継をせずに視聴者が「目で見て感じる」ように黙っている。

2分50秒もの長い時間、黙っていられるアナウンサーと解説者は、日本にはいない。

日本のプロ野球実況・解説者は、余計なことをしゃべり過ぎる。

やれ打率とか相性とか余計な情報を並べて、投手と打者の気持ちを勝手に代弁する。

真剣勝負のシーンでは、黙っていてほしいという理由は、こういう感動を味わえるから。

見ているだけで胸が熱くなる。こみ上げてくる感動がある。素直にカッコイイと思える。

それらは、感動の押し売りをされないからこそ生れる人間の素の感情だ。

マラソン中継でも同じである。語彙力がなく、説得力もないゲストを黙らせてほしい。

感動的なシーンをアナウンサーが自分の言葉でつくって盛り上げようとしなくてよい。

大きな声を張り上げて意図的に感動させようとしなくてよい。

歴史的な真剣勝負に自分の言葉を入れて映像に残そうとしないでほしい。

余計なことをしないでほしい。感動の押し売りをしないでほしい。

2分50秒間、黙っていられる勇気を持ってほしい。

視聴者が求めていることを、このシーンを見て学んでほしい。

<男子選手の分析>
MGCでの勝者は、中村匠吾選手と服部勇馬選手となった。「ラスト2㎞の走りは、素晴らしかった。これなら五輪本番でも期待が出来る」そう感じた国民は多かったと思う。しかし、五輪本番を見据えた時に、この二人が失速する可能性も高くなったのも事実である。今から約一年。今までの人生で感じたことのないプレッシャーを感じて生活をすることになる。調整の為のレースであっても、軽い気持ちで走ることなどできない。東京五輪代表選手として不甲斐ない走りはできない。故障もできない。メディアは、五輪が近づけば近づくほど大袈裟な記事を書いて騒ぎ立てる。本人の口からはメダルの話などしていないのに、わざと「誰々がメダル獲得も期待できると言っていますよ!」と話を振る。その感想として「そのように言って頂けて嬉しいです。本当にそうなったら嬉しいですね。」と答えたのに、翌日のニュースには、「〇〇選手、メダル宣言!」「メダル獲得を誓う!」などと大々的に掲載される。中村選手と服部選手は、これから何百回と「メダルを獲得したい!」言わされる。嫌と言うほど言わされる。お人よしの選手ほど、丁寧に答えようとして、その罠にはまってしまう。そして、自分を見失ってしまう。マラソンの日本代表と言っても、アジア大会や世界陸上は、それほどプレッシャーは掛からない。何故なら、注目度が低いから。しかし、五輪だけは、別格の扱いを受ける。ある元長距離選手が言っている。トラック種目での五輪参加の時と違い、マラソンでの五輪代表は、扱われ方が違う。最初の頃は、VIPのような待遇を受けて嬉しい気持ちになる。しかし、徐々に、その特別扱いが重荷に感じるようになる。受けたくもない取材を受けて、言いたくもないセリフを言わされる。「国民のため」というワードが重くのしかかってくる。今までの人生で感じたことのない重圧を背負う毎日が始まる。箱根駅伝の100倍、いや、1000倍以上の重圧を感じながら大会当日を迎える。海外の五輪なら、まだリラックスする機会がある。メディアが来ない場所を作ることができる。しかし、東京五輪には、「逃げ場」がない。すべての国民に見られている感覚を受けながら毎日を過ごす。五輪本番で、もし、失速した姿を見せて入賞すらできなかったら「一生の敗者」になることを中村選手と服部選手には、覚えておいて欲しい。五輪は、出場しただけでは意味がない。メダル獲得などの活躍をしないと数年後には自分の存在を忘れ去られてしまう。陸上競技に詳しいファンなら覚えていてくれる。しかし、国民は、すぐに記憶から消去してしまう。瀬古、中山、谷口以外の選手を国民が知っているかといったら殆どの国民は、名前を挙げられない。バルセロナ五輪で銀メダルを獲得した森下広一選手でさえ名前を忘れられている。その他の選手は、自分から五輪代表だったと名乗らない限り国民には分からない。「五輪に出場して何位だったんですか?」と問われた時に、返答に窮してしまう。12位とか20位とか言っても感動されない。それが現実である。その点、今回内定を貰えなかった大迫選手と設楽選手には、ここからのドラマがある。間違いなく国民に覚えられる選手になる。MGCファイナルチャレンジレースに出場して2時間5分49秒を切ったら、もう、それで国民のヒーローとして記憶に残る。五輪本番で好結果を残さなくても「よく頑張った!」と評価を受ける。国民は皆、味方についてくれる。しかし、1年間の準備期間がある中村選手と服部選手が、入賞さえできなかったら「1年も準備をする期間があったのに何やってんだ!」と言われ、「プレッシャーに負けた選手」「国民の期待を裏切った選手」となってしまう。これが、マラソン五輪代表選手の宿命である。中村選手、服部選手には、その自覚があるだろうか。両選手の指導者には、マラソン五輪代表の実績がない。自分が経験していないことを選手には教えられない。MGCで勝ったくらいで泣いてしまうような「ひ弱な指導者」では、五輪代表選手としての覚悟・宿命・その後の人生を教える事はできない。この時点で「参加するだけで満足」をしてしまっているのが分かる。あそこは泣く場面ではない。過去にメダルを獲得している選手を指導してきた指導者達は、選考会で勝ったからといって泣いたりしなかった。常に五輪本番での勝利を頭に入れていたので、そんなところで泣いたりはしない。皮肉にも、今のマラソン指導者の意識が低いことを「あのシーン」が証明してしまった。自分が泣いてどうする。東京五輪で活躍する選手、「本当の勝者」になるのは誰か?それは、今後のレースを見れば分かるだろう。大迫選手と設楽選手には、大きなチャンスがあると考えてよい。五輪本番を見据えた場合、自分達の方が有利な立場になったことを喜んでよい。勝敗を決める場は、MGCではない。東京五輪本番である。勝負は、これからだ。


NHKとTBSでゲスト解説をしたマラソンのメダリスト達。

「ふざけているのか!」と叱りたくなるくらいとんちんかんな言葉を連発していた。

女子のレースにおいては、選手達の調子を読み違えて勝手な判断をしていた。

「この選手の調子が良い」

「走りが素晴らしい」

「安定している」

「走り込んできたのが脚を見れば分かる」

すべて外れていた。

ワコール勢が走り込み不足なのは、スタート前の脚を見れば一目瞭然だった。

松田選手と岩出選手のカラダにキレがないのも走り始めてすぐに分かった。

上原選手などは、戦う以前の問題だった。

もっと言えば、2位に入った鈴木選手のスタート前の表情にも余裕がなかった。

その一方で、天満屋勢の表情、上半身の絞れ具合、脚の鍛え方の凄さが際立った。

有森裕子、野口みずきの「目」は、まったくあてにならない。

緊張感のない解説、ふざけたようなコメント、見下したような言葉。

真剣に女子マラソン界の復活を期待するコメントは、ひと言もなかった。

男子マラソンの解説をした高橋尚子は、「男のガチ勝負」を見届けることとなった。

設楽選手の失速シーンを自分の失速シーンとダブらせて見ていたのだろう。

脚に力がなく、無抵抗に抜かれていった自分の姿を思い出したはずだ。

このコースは、バネを使って走る選手には不利なコースだ。

大迫選手、設楽選手が敗れたのは、バネを使って走るタイプだから。

優勝した中村選手、2位の服部選手は、バネを使わずに膝下の動きでさばく走りである。

女子優勝の前田選手も同じ。バネを使わない走り方の選手が勝っている。

膝下のさばきを活かして走る選手の方が、このコースには強い。

エネルギー効率が良く、アップダウンへの対応ができる。

そんなことは、走る前から明らかである。しかし、多くの指導者は、それに気付かない。

それを指摘する陸連関係者もいない。そんな最低限の知識も持っていない。

メダリスト達は、このコースで勝たせるために必要な技術を解説できない。

「メダリスト」というだけで解説をさせるのは無理がある。

彼女たちには、その知識、分析力、語彙力がない。

言葉に信ぴょう性がない上、無責任な発言をするだけでは、なんの感動も生まれない。

選手達の感動シーンを素人のようなおしゃべりで台無しにしている。

余計なことをペラペラとしゃべらずに、黙って見ていればよかった。

選手達は必死に頑張って、夢の五輪代表を目指した。

しかし、メダリスト達からは、夢と希望を感じられる言葉は無かった。

これが、女子マラソンが復活しない理由だと、改めて痛感したレースとなった。

今回のMGCは、世界中の有力選手に「有益情報」を与えるレースとなった。

金哲彦氏は、「日本人選手だけが本番とほぼ同じコースを走ったのは有利になる。メダル獲得もある」と話す。しかし、その考えは甘い。今日のレースを見れば、海外のトップ選手達も「東京五輪コース戦略」は立てられる。コース分析・戦略チームを擁しているのは、日本チームだけではない。

今日のレースを振り返る。スタートから誰も飛び出すことなくスローな展開で淡々とレースをすれば、コース戦略を海外の選手達に知られることはなかっただろう。レース終盤のキツさを海外選手に知られずにいた方が良かったと考える関係者もいる。設楽選手の失速シーンを見せなければ、五輪本番で前半から飛ばす選手も出てきたかもしれない。しかし、今日のレースで「前半からハイペースで飛ばすリスク」をアフリカ勢を中心とした海外の有力選手が学んでしまった。

それは、「あんなに飛ばしたら後半激しく失速する。だからスローペースで入ろう」という単純なものではない。大前提として「今の日本人選手と自分達とでは実力が違う」と思っている海外選手は、弱気になどならない。逆に「一人で飛ばさずに複数人で飛ばしていけば、もっと楽に走れるはず。もし一人が失速しても誰かが最後まで残れば国としてメダルを獲れる」と考える海外選手も出てくるだろう。「勝負所は、中村匠吾選手がスパートした場所。だから、敢えて、あそこでの勝負ではなく、仕掛ける場所を変えよう」と戦略を練ってくる選手もいるだろう。

今日走った日本人選手のみが知り得た情報などはない。今日のレースを見た海外の選手は、「東京五輪コース」の走り方を学習したはずだ。ただでさえもフルマラソンの走力は、3分以上違うのだ。圧倒的に走力が違うというのを前提に考えなくてはならない。世界のレベルは、そんなに低くはない。五輪のメダルは、簡単には取れない。そんなに甘くはない。

もし、海外のトップ選手が今日のレースを走っていたら、間違いなく3分先にゴールをしている。設楽選手のペースで前半を走っても、後半、あそこまで失速はしない。五輪本番での男子選手のゴールタイムが、2時間10分を超えることはない。どんなに暑さが厳しくても、起伏があっても、海外のトップ選手達は、2時間8分~9分ではゴールをする。そう予測する理由は、これまでの海外レースでの「走りの違い」が物語っている。

今日のレースのデメリットを言うなら、世界中にコース攻略法を公開してしまったこと。

女子の前田穂南選手がしたレースのように、最初の10~15㎞を抑えただけでも、あれだけの差をつけられるのである。もし、海外の有力選手が、前田選手と同じレース展開をしたら、その後は、グングン差をつけられてしまう。簡単に逃げられてしまうだろう。

日本人選手が有利になることなどない。圧倒的な差をつけられて負けるのは変わらない。

今日のレースで海外のトップ選手との実力差が埋まる訳ではない。むしろ、チームJAPANの手のうちを明かしてしまったことを真剣に受け止めるべきだ。世界へ向けてコース攻略法を公開をしたことの意味は大きい。

今後、取り組むべきことは、ひとつ。実力差を縮めること。走力をアップすること。それが出来て初めて、五輪での入賞があり、メダル獲得がある。

【女子800m決勝結果】
1.2:06.04 ヒリアー紗璃苗  (明星3・東京)
2.
2:06.21 ワングイエスターワンブイ(興譲館1・岡山)
3.
2:07.59 澤井柚葉   (星稜3・石川)
4.
2:07.81 谷口ゆき   (星稜1・石川)
5.
2:08.58 仲子綾乃   (浜松西2・静岡)
6.
2:10.25 川島実桜   (豊橋南2・愛知)
7.
2:11.03 有廣璃々香  (東大阪大敬愛3・大阪)
8.
2:14.43 上田万葵   (舟入3・広島)


(女子800m決勝 ☆ 沖縄インターハイ陸上2019 by TR MV)

<解説>
レース序盤から、興譲館のワンブイ選手が独走し、先行逃げ切り作戦に出る。ヒリアー選手は2番手に位置して一人で走る。他の選手達は、二人を追いかけずに後方で3位を狙う展開。ヒリアー選手が得意なレース展開は、1周目を集団の一番後ろに位置して脚を休め、ラスト300mからストライドを伸ばしてピッチを切り替える。250mからトップギアに入れて先頭に出る。そこから一気に加速してゴールまで逃げ切る。これが、ヒリアー選手の得意なレース展開だ。日本選手権でも同じだった。しかし、今回は、早い段階から一人旅になった。部活練習でのタイムトライアルに近い孤独のレースだったので、終始、脚を使っていた。いつも通りにラスト250mからギアチェンジして先頭を走るワンブイ選手を追いかけ始め、ラスト200mを切ってからは、完全にロックオン。ラストの直線でワンブイ選手に並びかけるも、ワンブイ選手も抵抗してみせる。ラスト70mでヒリアー選手が最後のスパートをして順位が逆転。そのまま先頭に出てラストの直線を駆け抜けていく。これまでのレースと違い、決勝では前半から脚を使ったので、流石にラスト30mから脚が止まってしまった。ヒリアー選手の脚が止まったことを察知したワンブイ選手が、もう一度スピードを上げる。しかし、抜き去るだけの力は、ワンブイ選手にも残っていなかった。ラストの数メートルは、二人とも脚が動いていなかった。ゴール直後のキツそうな表情が苦しいレースであったことを物語っている。悪天候の中で良く走り切った。素晴らしいレースだった。

後方では、星稜の澤井選手と谷口選手が、3位・4位に上がり、星稜パワーを見せつけた。5位に入った浜松西の仲子選手も下馬評通りの走りを見せてくれた。

たった2周で競う種目だが、実は、難易度が高い種目である。予選・準決勝・決勝と3回走るスタミナが必要だし、勝つためには高度な戦略と技術が必要になる。「ダーッと走ってダーッとゴールする」という種目ではない。頭を使って走らないとラストの数メートルでも脚が止まってしまう。だからこそ、力の差が大きく出る種目であるのは間違いない。

男子のクレイアーロン竜波選手のように、女子にもヒリアー選手のような潜在能力の高い選手が出てきたのは、日本陸上界には明るい材料だ。今後、数年掛けてカラダ作りをすれば、1分台ランナーになれる可能性は十分にある。高校卒業後もワールドクラスランナーを目指して大事に育てて欲しいと願う。


【男子800m決勝】
1.1:50.24 クレイアーロン竜波 (相洋3・神奈川)
2.
1:51.80 金子魅玖人 (鎌ヶ谷3・千葉)
3.
1:52.75 馬場勇一郎 (中京大中京3・愛知)
4.
1:53.46 二見優輝  (諏訪清陵2・長野)
5.
1:54.17 山岡龍輝  (洛南3・京都)
6.
1:54.64 石井優吉  (八千代松陰2・千葉)
7.
1:55.08 南田航希  (大塚3・大阪)
8.
1:55.72 安倍優紀  (清陵情報3・福島)


(暴風雨の男子800m決勝 クレイアーロンが連覇 ☆ 沖縄インターハイ by TR MV)

<解説>
今まで前例のない悪天候下でのレースとなった男子800m決勝。クレイアーロン選手の優勝は、間違いなかった。暴風雨の中で「心を落ち着けて走った選手」が上位に来た。あんなに悪天候では、戦闘意欲が失せる選手もいたはずだ。決勝に残った時点で8位入賞が決まっているので、大学進学も就職も100%保証された選手達である。気合が入らなくても仕方がない面もある。

その中でレース前の予想を覆したのは、中学記録保持者の馬場選手。早い段階からバラけるレースとなったのも馬場選手には有利な展開となった。このような悪天候下のレースでは、中学記録保持者の意地とプライドが活かされる。どんな状況でも安定した走りを発揮できる力を持っていることを証明した。

鎌ヶ谷の金子選手の2位も狙い通りの順当な結果と言える。千葉県勢の連携プレーによる結果であるのも間違いない。前半から積極的な走りを見せた八千代松陰の石井選手の走りが、後半に強さを発揮する金子選手の走りを引き出している。別の高校だが、チーム千葉として上手いレースをした。こういう連携プレーもあるという良い例となった。

悪天候でなければ、1位以外の結果は違っていたかもしれない。全体が速い展開になれば、ゴール順位は変わっていたとも考えられる。それが勝負の面白さである。天候によって結果が左右されることも勝負にはつきものだ。高校生は、このレースを通じて、どんな状況でも安定して走れる力を養うことが必要だと学んだことだろう。

NHKの実況は、相変わらず下手である。選手達の現状をまったく把握していない。誰に焦点をあてて中継すれば良いか全然分かっていない。NHKの中継では、1500mのレースで一番大事な「ラスト1周の競り合い」が、まったく分からない。勉強不足なのも、ここまでくると恥ずかしい。唯一、褒められるとしたら優勝した神村学園のシンシア選手のインタビューが可愛かったことだ。一生懸命に話して気持ちを伝えようとする姿は、純粋に心に響いた。

では、
日本人選手の走りについて、的外れのNHKの実況よりも、的を得た解説をしたい。

<解説>

留学生の3名とは、別のレースになった時点で、高速レースにはならないことが確定した。本来なら、留学生のペースに食らいつき、4分10秒台を出せる選手が揃っていたが、4位争いをするレースになってしまったのが残念である。こういうレースをしているうちは、将来の飛躍は期待出来ない。最低でも日本人選手が4分17秒〜18秒でゴールをして欲しかった。

日本人選手のレースは、ラスト500mから動き始める。結論から先に言うと、日本人トップを獲る可能性があった選手の筆頭は、錦城学園の増渕選手と保坂選手だ。特に増渕選手は、限りなく日本人トップを獲れた可能性があった。二人とも積極果敢な走りをするのが武器だが、インターハイの決勝では、もう少し我慢すべきであった。動くのが速過ぎた。ラスト500mから動かずに、5〜6番手の位置にいて、ラスト300mからも、じっとチャンスを伺って4〜5番手に位置していれば良かった。そして、ラスト50mからの勝負にかけていたら、間違いなく日本人トップを獲れていた。それくらい良い動きだった。ラストの脚も残っていた。東京都大会や関東大会とは違うレースプランを練って、ラストまで我慢することに徹していれば、二人揃って6位入賞をしていた。果敢に攻めた結果であるから悔いはないと思うが、全国の決勝で戦うためには、それくらいの「したたかさ」が必要だ。

逆に、それをやってのけたのが成田の山﨑選手だ。最後の最後の最後まで我慢して我慢して我慢した。インターハイの決勝では、ラスト50mからの勝負になる。それを成田陣営は良く分かっていたのだろう。レース中、一度も無駄な動きをしていない。集団の前に出ることも、横に膨らむこともなかった。ラスト200mの時点で、一番余裕があったのが山﨑選手。行こうと思えばいつでも仕掛けられた。しかし、動かずに最後の脚を溜めていた。もしも、ハイペースになっていたら、この順位ではこれなかったかもしれない。山﨑選手は、レース序盤に誰も留学生を追わない展開になった時点で、既に作戦勝ちをしていたと言っても過言ではない。「最後まで動かない勇気」を持っていたことが日本人トップを獲得した要因だ。「あっぱれ」をあげたいくらい上手い走りだった。

正攻法で「力勝負」にいったのが、須磨学園の樽本選手である。終始、集団を引っ張る強気な走りは、素晴らしかった。ラスト300mから加速して、ラスト200mから、もう一段加速。更にラスト100mからも加速するという3段階スパートは見事だった。ラスト70m〜50m地点で一瞬抜け出しかけたので、正直「勝った」と思えた瞬間もあった。しかし、残念ながら、そこから、もう一段スピードを上げる力は残っていなかった。正攻法で走った結果であるから仕方ないが、敢えて言うとしたら、わざと一瞬だけ他の選手を前に行かせて、たった3秒で良いから脚を休めていたら、日本人トップでゴールしていただろう。

樽本選手を意識し過ぎてラスト50mからの伸びが足りなかったのは、長野東の高松選手だ。横に並びかけたり、競り合う戦闘モードに入れずに、もう少し力を抜いた走りをしていれば、高松選手が日本人トップになっていた可能性もある。樽本選手と信櫻選手を意識し過ぎていたように見えた。少なくとも山﨑選手に対しては、ノーマークだったのは間違いない。難しい判断であるが、集団の前に位置取りをすると、自分の後ろに居る選手が、どんな動きをしているのかが見えない。だから対応出来なかったというのが本音だと思う。

それは、信櫻選手も同じだ。まさか山﨑選手が後ろから来るとは思っていなかっただろう。ラスト50mから、あんなにキレのある走りが出来るとは想像していなかっただろうし、負けるとも思っていなかったかもしれない。もし、信櫻選手が樽本選手の位置で走っていたら、そのまま逃げ切ったかもしれない。信櫻選手は、先頭で逃げるレースの方が持ち味が出る。800mを過ぎてから樽本選手の前に出て、走りやすいインコースを走っていたら、ラストで山﨑選手に勝てた可能性はある。

勝負は、一瞬の判断によって決まる。どの選手にも日本人トップの可能性は十分にあった。


(2019全国高校総体 女子1500m決勝 by TM_PP)

【女子1500m決勝結果】
  1.4:10.99 バイレ シンシア (神村学園2・鹿児島)
  2.
4:12.46 アグネス ムカリ (倉敷2・岡山)
  3.
4:14.46 メアリー ムイタ  (大分東明2・大分)
  4.
4:23.13 山崎りさ (成田2・千葉)
  5.4:23.16 高松いずみ(長野東3・長野)
  6.
4:23.36 樽本つかさ(須磨学園3・兵庫)
  7.
4:23.53 信櫻 空 (川崎市立橘3・神奈川)
  8.
4:24.07 増渕祐香 (錦城学園3・東京)
  9.
4:25.33 保坂晴子 (錦城学園3・東京)
10.
4:25.37 黒川円佳 (神村学園2・鹿児島)
11.
4:27.01 石松愛朱加(須磨学園1・兵庫)
12.
4:28.26 南 日向 (順天1・東京)
13.
4:28.74 堤 好伽 (有明3・熊本)
14.
4:31.60 村松 結 (立命館宇治1・京都)
15.
4:33.19 長澤日桜里(山形城北3・山形)
16.
4:36.59 樫原沙紀 (呉三津田3・広島)

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