ランナーズ・ジャーナル JAPAN (Runners-Journal.Jp)

事実に基づいた「真実のコラム」を掲載しています。今だからこそ伝えたい「本当のこと」をありのまま伝えたいと思います。

カテゴリ: 2019日本選手権

日本選手権男子10000m決勝は、数多くのドラマを陸上ファンに魅せてくれた。

歴史上、最も激戦であり好記録のレースとなったのが1996年の日本選手権。

アトランタ五輪の代表争いにSB食品勢と高岡寿成が死闘を繰り広げた。


(1987年 陸上日本選手権 男子10000m決勝 by TAKE1500)
 1位 阿久津浩三 28分23秒12
 2位 若倉和也  28分31秒71
 3位 中村孝生  28分33秒14


(1996年陸上日本選手権男子10000m決勝 by kasaroad2003)
 1位 高岡寿成 27分49秒71


(2012日本陸上競技選手権男子10000m決勝 by ookubo eiji)
 1位 佐藤悠基 28分18秒15


(日本陸上競技選手権2014 男子10000m決勝 by ドリス)
 1位 佐藤悠基 28分32秒07


(日本陸上競技選手権2017 男子10000m決勝 by ドリス)
 1位 大迫 傑 28分35秒47

全く危なげない勝ちっぷりだった。

その走りからは、迷いが感じられない。勝利に向かって自分のレースを貫いた。

一年前までは、1500mでも3000mでも全国タイトルを持っていなかった選手が、

大学一年生にして「日本チャンピオン」の栄冠を手にした。素晴らしい走りだった。
 (女子3000m障害物決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟)

レース前から力の差は歴然としていた。その通り余裕の勝利であった。

吉村玲美の強さは、ブレない心とカラダを持っていること。高校時代は目立つ選手ではなかったが、どんな大会でも大きく崩れた走りをした姿を見たことがない。最後まで粘りが効いて、ジワジワと順位を上げてゴールする安定感がある選手だった。

一見、腰が落ちているように見えるランニングフォームは、スピード対応がし難い印象を与えてしまう。しかし、実は、あの腰の安定が3000mSCに向いている。3000mの中で27回も障害物を跳ぶと腰の位置が安定しない選手は、エネルギー消費が大きく、後半大きく失速してしまう。しかし、吉村のように腰の位置が安定している選手は、エネルギー・ロスが少なくスタミナを後半まで維持できる。更に大きな武器となっているのが、1500mを4分10秒台で走るスピードだ。他の選手が疲れて脚が止まってしまうラスト1周に最速ラップを刻めるスピード維持力は、今の女子3000mSC選手の中では、ズバ抜けている。

吉村には、インターハイ決勝レベルのスピードがあり、3000mも9分08秒で走る力も持っていた。転機は、2000mSCで高校新記録を作ってからだ。自分の最大の武器を活かせるのは障害だと気付いてからは、着実に3000mSCの記録を更新していった。関東インカレで優勝した走りを見て「今年は、日本一になる」と確信した。余程のことが無い限り、女子3000mSCは、吉村玲美時代が続くだろう。インカレ4連覇&日本選手権4連覇という偉業を成し遂げる可能性もある。

自己記録は、今年中に9分40秒前後まで更新できるだろう。「先を急がない」大東文化大学コーチングスタッフの指導スタイルも吉村には合っている。大学4年間でしっかりと基礎体力養成と脚力強化が出来れば、4年後には9分20秒台前半も見えてくる。2021年世界陸上アメリカ大会、2023年世界陸上ハンガリー大会で決勝進出する可能性もある。

吉村のように「高校時代から能力は高かったが、スター選手として脚光を浴びてこなかった選手」は、高校卒業後の「伸びしろ」がある。高校時代に「心が疲れ果ててしまう選手」と違い、気持ちが擦り切れていない。だから、走っている姿に悲壮感が無い。実に楽しそうに走っている。こういう選手は、高校卒業後に大化けする可能性がある。今後、どんな成長をして、どんな活躍を見せてくれるのか、今から楽しみだ。

吉村玲美の成長を温かく、そして、長い目で見守っていきたい。


これが、本当の日本選手権である。

最低でも、このレベルでレースをしないと意味がない。

今年の日本選手権は「学生の認識の甘さ」と「実業団選手の意地」が出た大会となった。

「授業料を払っている学生」と「給料を貰っている実業団選手」のプロ意識の違い。

今年のレースは、昨年までのような「レベルの低いレース」ではなかった。

その一言に尽きる。実に気迫のこもった、闘志あふれる好レースだった。
 (決勝 男子1500m決勝 日本選手権陸上2019 by 陸上Track&Field) 

昨年の優勝タイムが、3分52秒台。一昨年が、3分49秒台。高校生レベルである。それなのに「王者」と大袈裟に称賛したメディアにもダメ出しをしなければならない。

学生達が、インカレ同様にスローペースになると思い込んでいたのは、安易に想像がつく。そして、引っ張る選手がいたら、それについていこうと身構えていたのも最初の400mの走りを見れば分かる。しかし、実業団選手達は、「わざと」2周目を落とした。400mから800mを61秒。この時点で学生が勝つ確率は、殆ど無いに等しくなった。敢えて、言わせて貰うが、飯澤、舘澤、舟津は、自分達でレースをつくる意気込みが足りなかった。レースの主導権を3人で握り合って勝つためのレース運びを着実に行うべきだった。400mから800mを56〜57秒に上げていたら学生達に勝機が生れたはずだ。実業団選手の術中にハマった結果、学生陣は、惨敗に終わった。

学生選手達は、実業団選手を上手く利用して走るレースプランを緻密に練る必要があった。何故なら、今年の実業団選手の顔ぶれが、昨年までの格下選手ではなく、「タフな走り」ができるトップ選手が集まったからである。それを理解して上げ下げの激しいレースにも対応できるプランを立てる必要があった。

力のある実業団選手達が、ガチ勝負をしてきたのである。給料を貰って走っているプライドと実業団選手としての意地が、自信に満ちた走りから伝わってきた。わざと2周目を61秒まで落としてから、3周目を57秒まで一気に上げる展開に、学生達は全く対応出来なかった。59秒ー61秒ー57秒ー42秒。一旦、ラップを落としてから急激なビルドアップをして3分39秒でゴールしている。ハッキリ言って、日本記録が破られるのは、もう時間の問題だ。優勝した戸田、2位の松枝は、3分37秒台で確実に走れる力がある。そこに割って入るのが、飯澤と舟津。この二人が、再び、実業団選手を脅かす勢いを取り戻せば、間違いなく、日本記録は更新できる。その時に、誰が、先頭でゴールをするかが、本当に楽しみである。

因みに男子の3分30秒台は、女子の4分一桁に相当する。現在の女子のレベルは、そこまでには、至っていない。非常に大きな開きがある。しかし、卜部蘭の2冠により、光が射してきたのは間違いない。800mを2分02秒で走る力があれば、1500mでも4分一桁の記録が出ても不思議ではない。

大学の記録会ではなく、日本選手権という大舞台で記録が出たことが大きな収穫であった。男女ともに、勝負は、この2年だ。2年以内に男女の800mと1500mの日本記録更新を自分が達成するという気持ちでチャレンジしてくれることを期待したい。


卜部蘭が、2冠を達成した女子800m決勝。堂々とした素晴らしい勝ち方であった。

1.2:02.74 卜部 蘭 (NTTC)
2.2:03.35 川田朱夏 (東大阪大)
3.2:03.87 塩見綾乃 (立命館大)
4.2:04.99 ヒリアー紗璃苗(明星高)
(女子800m決勝 日本選手権陸上 2019.6 卜部蘭/川田朱夏/塩見綾乃 by TR MV)

卜部には勢いがあり、他者を圧倒する力があるのは誰の目から見ても明らかだった。逆に、ビッグ3と言われる川田、塩見、北村の不甲斐なさを感じるレースでもあった。川田と塩見の走りからは、成長を感じない。毎回、同じレースをして、同じ負け方をする。

これまでも言ってきたように川田と塩見の走りには、柔らかさがない。力みがあり、勝負所でカラダが固まってしまう。だから、ラストスパートに爆発的なキレがない。どう見ても動きが硬すぎる。おそらく、川田と塩見の近くには、柔らかいカラダの動きをつくり、潜在的な力を最大限に引き出せるコーチングスタッフがいないのだろう。本当に勿体ない。

それに比べて卜部の走りには、無理がない。500mを過ぎてからのバックストレートでの走りを良く見て欲しい。先頭を走る塩見と川田の「窮屈な脚の動き」に比べて、後ろから追いかけてきた卜部とヒリアーの「伸びのあるストライド」と「膝下の柔らかい動き」は、誰が見ても違う。これは、一目瞭然である。

今回のレースで一番の盛り上がりを見せた場面は、バックストレートでヒリアーが、先頭へ躍り出た瞬間である。スタンドから歓声が沸き上がるほど、ヒリアーの走りには存在感があった。ああいう走りが出来るランナーが出てくることによって日本記録の更新がある。現時点では、卜部との力の差は歴然としているが、経験値を上げることによって勝てる可能性は十分にある。そういう魅力のある選手が出てきたことに対して素直に喜びを感じる。

今回の決勝レースは、女子800m界に新たな風を吹き込み、日本記録更新の可能性を感じる素晴らしいレースであったことを紹介しておきたい。

 (サニブラウン200mも優勝 100mと2冠達成 <陸上日本選手権 by NHK)



(女子5000m 決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟)



(男子1500m 決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟)



 (女子800m 決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟)



 (女子三段跳 決勝1位 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟)

実は、このレース。近年、稀に見るショッキングなレースとなった。

塩尻和也選手が、まさかの失速。それも、障害をまたいで跳ぶ姿は痛々しかった。

ラスト1周は、完全に脚が動かなくなってしまった。
 (男子3000m障害物決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟) 

こういうレースになってしまう原因は、ふたつ。

1.独走状態に持ち込めず焦りカラダが硬直した
2.横並びで走ることで想像以上に脚を使った

基本的には、両方が原因と考えるのが妥当である。

2000mのあたりでは、既に、脚に力がなく、障害の跳び方が不安定で着地するたびに大きな衝撃を受けていた。あの跳び方では、脚へのダメージが大きくエネルギーを消耗していた。

もし調子が良くないのを承知の上で記録を出す為に何度も先頭に立ったのであれば、それは、素晴らしいことだ。しかし、あんな風に崩れてしまうのなら、力をセーブすべきだ。

負けにも様々な負け方があるが、あの負け方、いや、もう勝ち負けではなく、ただ単に失速している走りでは、自分の体調をコントロール出来ていない危険性さえ感じる。

今回の走りは、本当に選手生命を脅かすような走りだった。ああいう失速の仕方は、本当に危険であることをチームスタッフは、真剣に考えるべきである。走り込み不足とか調整に失敗したとかいう問題ではない。ああいう大失速は、選手生命を終わらせてしまうほどの危険なサインであると真剣に考えて欲しい。

女子短距離の福島千里、市川華菜は、恐らく自分でも何故走れないのかが分かっていない。女子800mの北村夢も、体操の内村航平、白井健三などの選手達も・・・今まで当たり前に出来ていたことが、ある日突然、出来なくなる。高橋尚子の引退レースとなった名古屋国際女子マラソンのように、カラダが動かないまま普通では「あり得ない失速」をしてしまう。そんな瞬間が、突然やってくる。

塩尻選手は、まだ若い。体力の限界に達しているとは考えにくい。だからこそ、ああいう「あり得ない失速」は、あってはならないし、冷静に原因を分析する必要がある。何でもないなら、それでいい。安心材料が増えることが大事だ。

塩尻選手ほどの選手が、何故、あそこまで大失速したのかをチームスタッフは、慎重に分析する責任がある。油断とか調整不足とかでは片付けてはいけない。来年の東京五輪には必要な人材の一人であるからこそ、今回の原因追及に全力で臨んで欲しい。




【女子800m決勝結果】
1.2:02.74 卜部 蘭 (NTTC) PB
2.2:03.35 川田朱夏 (東大阪大)
3.2:03.87 塩見綾乃 (立命館大)
4.2:04.99 ヒリアー紗瑠苗(明星)  PB
5.2:05.35 広田有紀 (秋田大)
6.2:05.72 上田万葵 (舟入高) PB
7.2:09.35 細井衿菜 (慶応義塾大)
8.2:12.29 北村 夢 (エディオン)

【男子5000m決勝結果】TOP10
  1.13:41.27 松枝博輝 (富士通)
  2.13:43.13 田中秀幸 (トヨタ自動車)
  3.13.44.40 服部弾馬 (トーエネック)
  4.13.46.39 茂木圭次郎(旭化成)
  5.13:47.00 相澤 晃 (東洋大)
  6.13:47.19 平 和真 (カネボウ)
  7.13:47.25 遠藤日向 (住友電工)
  8.13:47.31 設楽悠太 (Honda)
  9.13.47.44 鬼塚翔太 (東海大)
10.13:55.16 市川孝徳 (日立物流)

【男子800m決勝結果】
1.1:46.59 クレイアーロン竜波(相洋高)PB
2.1:46.78 川元 奨 (スズキ浜松AC)
3.1:48.32 西久保達也(早稲田大)
4.1:49.17 瀬戸口大地(山梨学院大)
5.1:49.23 市野泰地 (ROBLE)
6.1:49.76 花村拓人 (関西学院大)
7.1:50.56 梅谷健太 (サンベルクス)
8.1:54.71 松本純弥 (法政大)

【男子1500m決勝結果】
  1.3:39.44 戸田雅稀 (サンベルクス)PB
  2.3:40.93 松枝博輝 (富士通)   PB
  3.3:41.57 荒井七海 (Honda)   PB
  4.3:42.76 的野遼大 (MHPS)   PB
  5.3:42.91 清水鐘平 (NDソフト)   PB
  6.3:43.25 秦 将吾 (大塚製薬)
  7.3:43.80 川村一輝 (明治大)
  8.3:43.87 森田佳祐 (小森コーポレーション)
  9.3:44.39 舘澤亨次 (東海大)
10.3:45.31 楠 康成 (阿見AC)
11.3:49.13 舟津彰馬 (中央大)
12.3:54.02 飯澤千翔 (東海大)

【男子3000mSC決勝】TOP10
  1.8:29.85 坂口竜平 (東海大)PB
  2.8:35.39 打越雄充 (大塚製薬)PB
  3.8:36.65 青木涼真 (法政大)
  4.8:38.84 滋野聖也 (プレス工業)
  5.8:40.30 三浦龍司 (洛南高)
  6.8:44.86 山口浩勢 (愛三工業)
  7.8:48.49 近藤聖志 (トヨタ自動車)
  8.8:51.44 塩尻和也 (富士通)
  9.8:51.73 清滝大記 (富士通)
10.8:58.50 吉田 匠 (早稲田大)
11.9:01.86 松本 葵 (大塚製薬)
12.9:18.30 高橋流星 (愛知製鋼)

【女子1500m決勝】TOP10
  1.4:15.79 卜部 蘭 (NTTC)
  2.4:16.23 田中希実 (豊田織機TC)
  3.4:16.45 萩谷 楓 (エディオン)PB
  4.4:16.52 高松智美ムセンビ(名城大)
  5.4:17.46 後藤 夢 (豊田織機TC)
  6.4:18.52 福田有以 (豊田自動織機)
  7.4:19.60 飯野摩耶 (埼玉医科大学G)
  8.4:20.33 岩川侑樹 (今治造船)
  9.4:22.53 橋本奈津 (京都産業大)
10.4:27.51 吉川侑美 (ユニクロ)

【女子5000m決勝】TOP10
  1.15:22.53 木村友香 (資生堂)
  2.15:23.46 鍋島莉奈 (JP日本郵政G)
  3.15:26.58 廣中璃梨佳(JP日本郵政G)
  4.15:29.00 田中希実 (豊田織機TC)
  5.15:30.41 佐藤早也伽(積水化学)
  6.15:38.20 渡邊菜々美(パナソニック)
  7.15:44.56 森田香織 (パナソニック)
  8.15:45.54 堀 優花 (パナソニック)
  9.15:57.51 矢野栞理 (キャノン)
10.16:00.93 長谷川詩乃(ワコール)

【女子3000mSC決勝】
  1.  9:50.44 吉村玲美 (大東文化大)U20日本新
  2.  9:59.54 石澤ゆかり(エディオン)
  3.  9:59.70 薮田裕衣 (大塚製薬)
  4.10:05.34 佐藤奈々 (スターツ)
  5.10:08.38 山中柚乃 (愛知銀行) 
  6.10:10.35 小池彩加 (大和田住宅仙台)
  7.10:18.79 西山未奈美(松山大)
  8.10:20.11 森智香子 (積水化学)
  9.10:26.79 清水萌衣乃(パナソニック)
10.10:27.83 西出優月 (関西外語大)
11.10:31.33 秋山祐紀 (大東文化大)
12.10:33.79 三浦佳奈 (東北福祉大)

優勝したクレイアーロン竜波と川元奨の力の違いは「見た目以上にある」ことを解説する。

1.1:46.59 クレイアーロン竜波(相洋高)
2.1:46.78 川元 奨 (スズキ浜松AC)
3.1:48.32 西久保達也(早稲田大)
 (クレイアーロン選手が高校新で優勝!by MOTOKI チャンネル)

ラストの直線の走りを後方から撮影している、この動画を見ると「見た目以上の力の違い」が、明らかに分かる。

伸びやかに脚の回転を上げていくアーロンに比べて、川元は、明らかに太腿が重い。だから、脚の回転数が上らない。踵の動きを見ると違いが良く分かる。力んでいる川元に対してアーロンは、ゴールが近づくほど高速回転になっていく。

更にゴール後の様子を見ると、もっと顕著に「見た目以上の大きな力の差」が分かる。

ゴール後、すぐに立ち止まってしまう川元に対して、アーロンは、かなり遠くまで駆け抜けている。脚がスムーズに高速回転しているので、その動きを止めるのにも減速距離が必要になる。川元は、既に脚に力がないので、すぐに足を止めてしまった。しかも、太腿が重たそうな仕草をしながらである。

この違いを、日本の多くの指導者が理解出来ていない。

「筋肉は、大きく太くしてはいけない」
「中長距離を速く走るには、パワートレーニングは必要ない」

モロッコの英雄として語り継がれている、サイドアウィータという選手の言葉である。
その実績は、言うまでもないが、一応、紹介しておく。

   <メダル実績>
1983年 世界陸上ヘルシンキ大会(フィンランド)
    1500m 銅メダル 3分42秒02
1984年 ロサンゼルス五輪(アメリカ)
    5000m 金メダル 13分05秒59
1987年 世界陸上ローマ大会(イタリア)
    5000m 金メダル 13分26秒44
1988年 ソウル五輪(韓国)
    800m 銅メダル 1分44秒06
1989年 世界室内ハンガリー大会(ブダペスト)
    3000m 金メダル 7分47秒94

   <自己記録>
・800m        1分43秒86(1988年)
・1500m      3分29秒46(1985年)
・1マイル    3分46秒76(1987年)
・2000m      4分50秒81(1987年)
・3000m      7分29秒45(1989年)
・5000m    12分58秒39(1987年)
・10000m  27分26秒11(1986年)
・3000mSC 8分21秒92(1987年)


『筋肉を大きくし過ぎてはダメだ。筋肉の重さは、自分の能力を軽減させる。私は、記録を追い求めるがあまり、ふくらはぎの筋肉を大きくし過ぎてしまった。数グラムの違いだが、この重さは命取りになる。だから、私は、ふくらはぎの筋肉を切除してベストな重さに戻した。』

これは、アウィータ本人から直接聞いた話である。手術した箇所も見せてくれた。
アキレス腱から真っ直ぐに、ひざ裏までメスを入れた傷跡がハッキリと残っていた。

彼は、こう付け加えた。

『マシンや器具を使って行うトレーニングは、基礎的な体力を養うには必要かもしれない。しかし、世界レベルの記録を出すには、自重負荷トレーニングで十分だ。パワーをつけても、そのパワーをレースで使えなければ意味はない。私は、筋肉を大きくするよりも、もっと大事なことがあると思っている。それは、股関節の可動域を広げ、柔らかくスムーズな動きを身につけること。そうすれば、自ずと脚の回転速度は上がる。筋肉を大きくすると関節にも大きな負担が掛かる。関節に大きな負荷が掛かるようなトレーニングは、結果的に脚の回転数を低下させてしまう。それでは、記録は出ない。ハードルなどを使ってスムーズに脚を引き上げる動きを繰り返し行うことが最も効果的だ。』

衝撃的な言葉であった。

「細くて、しなやかに動く筋肉こそが、自分が持っている最大のスピードを出す」

この話を聞いてから、30年近くなる。30年の時を超えて、今まさに必要な言葉だ。

これが、クレイアーロン竜波という選手に大きな可能性を感じる理由である。

終始レースの主導権を握って好位置をキープした卜部蘭が、圧勝に近い優勝を飾った。逆に言うと、他の選手は、大きな見せ場をつくることなく勝負が決まってしまった。

一見、ラストの直線でスパート合戦にように見えるが、卜部がトップスピードに上げたのは、1380mから1450mの70mのみ。その一回のスピードアップで勝負が決まった。

他の選手の敗因は、明快だ。オーバーストライドである。

卜部との身長差によるストライドの差を全く認識していないので、終始、卜部のストライドに合わせて走らされていた。だから、勝負所で、それ以上ストライドが広がらず、足の回転数も上らない。卜部の「たった一回のギアチェンジ」に対応出来なかったのだ。

田中希実も萩谷楓も身長に対して大き目のストライドで走る選手である。4分20秒前後のレースでは、その走りでも通用する。しかし、今回のように4分15秒前後のレースになると、自分のストライドを安定させなくては勝負ができない。卜部のストライドは、田中や萩谷の身長からしたら、かなり大きい。卜部の横で並んで走るだけでもエネルギーのロスとなる。それに気付けば、横に並ぶレースはしないはずだ。真後ろにいてラストに懸ければ良い。

卜部のストライドが、春季サーキットやアジア選手権の頃と比べて、若干狭くなっていることに気付いた方はいるだろうか。膝の位置が上がり、接地時間が短くなったので、その分、ラスト150mからの足の回転数が上がりやすくなった。もし、卜部の走りの変化に、田中、萩谷陣営が気付いていれば、ああいうレース展開はさせなかったはずだ。

ラスト50mから猛烈に追い上げてきた高松智美ムセンビは、卜部のストライドに惑わされない位置でレースを進めていた。だから、唯一、ラストスパートにキレがあった。ラストの100mは、高松が最速である。高松の敗因は、逆に、後方に位置し過ぎたこと。ラスト400mを切ってから、位置を前に移しておき、ラスト200mの時点で萩谷の真後ろに位置していたら、ラスト10mで卜部を捉えた可能性は十分にある。今シーズンのレースの中では、一番のキレを見せていただけに、高松の位置取りミスは、勿体なかったと言える。

卜部の優勝は、本人の努力によってスピードのキレが増したことが大きな勝因であるのは間違いない。それにプラスして、他選手の戦略ミスもあったことを紹介しておきたい。

 


 (サニブラウンが大会新の10秒02で優勝!<陸上日本選手権> by NHK)


 (決勝 男子800m 日本選手権陸上2019 by 陸上Track&Field)


 (決勝 女子400m 日本選手権陸上2019 by 陸上Track&Field)


 (決勝 女子100m 日本選手権陸上2019 by 陸上Track&Field)


 (男子 走高跳 日本選手権陸上2019 by 陸上Track&Field) 

【男子100m決勝 -0.3】
1.10.02 サニブラウン アブデル ハキーム(フロリダ大)
2.10.16 桐生祥秀    (日本生命)
3.10.19 小池祐貴    (住友電工)
4.10.24 飯塚翔太    (ミズノ)
5.10.29 多田修平    (住友電工)
6.10.31 坂井隆一郎   (関西大)
7.10.31 川上拓也    (大阪ガス)
8.10.33 ケンブリッジ飛鳥(Nike)

【女子100m決勝 +0.6】
1.11.67 御家瀬緑 (恵庭北高)
2.11.72 土井杏南 (JAL)
3.11.73 青山華依 (大阪高)
4.11.74 児玉芽生 (福岡大)
5.11.75 三浦由奈 (柴田高)
6.11.88 柳谷朋美 (大阪成蹊大)
7.11.89 和田麻希 (ミズノ)
8.11.89 石堂陽奈 (立命館慶祥高)

【男子100m準決勝1組 +0.2】
1.10.09 小池祐貴 (住友電工)
2.10.22 桐生祥秀 (日本生命)
3.10.27 飯塚翔太 (ミズノ)
4.10.28 坂井隆一郎(関西大)

【男子100m準決勝2組 +0.1】
1.10.05 サニブラウン アブデル ハキーム(フロリダ大)
2.10.20 ケンブリッジ飛鳥(Nike)
3.10.21 多田修平 (住友電工)
4.10.24 川上拓也 (大阪ガス)

【女子100m準決勝1組 +1.1】
1.11.60 三浦由奈 (柴田高)
2.11.74 和田麻希 (ミズノ)
3.11.83 柳谷朋美 (大阪成蹊大)

【女子100m準決勝2組 0.0】
1.11.60 土井杏南 (JAL)
2.11.70 御家瀬緑 (恵庭北高)
3.11.72 児玉芽生 (福岡大)
4.11.72 青山華依 (大阪高)
5.11.77 石堂陽奈 (立命館慶祥高)

【女子100m予選1組 -0.3】
1.11.77 御家瀬緑 (恵庭北高)
2.11.79 湯淺佳那子(日本体育大)
3.11.97 福田真衣 (日本体育大)

【女子100m予選2組 -1.0】
1.11.55 土井杏南 (JAL)
2.11.83 新坂太佳子(西池AC)
3.11.90 齋藤愛美 (大阪成蹊大)
4.11.98 名倉千晃 (NTN)

【女子100m予選3組 -0.7】
1.11.77 三浦由菜 (柴田高)
2.11.97 柳谷朋美 (大阪成蹊大)

【女子100m予選4組 -1.2】
1.11.81 児玉芽生 (福岡大)
2.11.88 青山華依 (大阪高)
3.11.89 三宅奈織香(住友電工)
4.11.90 石堂陽奈 (立命館慶祥高)

【女子100m予選5組 -0.1】
1.11.71 和田麻希 (ミズノ)
2.11.90 鈴木くるみ(旭川龍谷高)
3.11.91 壱岐いちこ(立命館大)

【女子100m予想】
1.土井杏南
2.世古 和
3.和田麻希

【女子200m予想】
1.青野朱李
2.広沢真愛
3.和田麻希

【女子400m予想】
1.髙島咲季
2.広沢真愛
3.青山聖佳

【女子800m予想】
1.塩見綾乃
2.川田朱夏
3.広田有紀

【女子1500m予想】
1.田中希実
2.卜部 蘭
3.高松智美ムセンビ

【女子5000m予想】
1.木村友香
2.鍋島莉奈
3.山ノ内みなみ

【女子3000mSC予想】
1.吉村玲美
2.石澤ゆかり
3.藪田裕衣




【男子100m予想】
1.サニブラウン・ハキーム
2.小池祐貴
3.桐生祥秀

【男子200m予想】
1.サニブラウン・ハキーム
2.小池祐貴
3.飯塚翔太

【男子400m予想】
1.ウォルシュ・ジュリアン
2.若林康太
3.伊東利来也

【男子800m予想】
1.クレイアーロン竜波
2.村島 匠
3.川元 奨

【男子1500m予想】
1.飯澤千翔
2.舘澤亨次
3.松枝博輝

【男子5000m予想】
1.坂東悠汰
2.設楽悠太
3.遠藤日向

【男子3000mSC予想】
1.塩尻和也
2.山口浩勢
3.三浦龍司



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