ランナーズ・ジャーナル JAPAN (Runners-Journal.Jp)

事実に基づいた「真実のコラム」を掲載しています。今だからこそ伝えたい「本当のこと」をありのまま伝えたいと思います。

カテゴリ: アスリート物語

レースは、戦いである。

「前を走る選手のランニングシャツを掴んででも自分が前に行く気持ちを持て!」

勝負を簡単に諦めてしまう選手に対して、そういう言葉を投げかける指導者もいる。

負けたくない気持ちが、レース中の一瞬の仕草に現れることもある。


(This 1500m Finish Has ALL The Drama by FLOTRACK) 

小中学生だけではなく、実業団選手でも相手を押しのけて位置取りをしたり、ラストの直線でわざと相手の走路を防いで邪魔をする選手もいる。許される範囲の中での戦いはある。


(1996年陸上日本選手権男子1万メートル決勝  by Kasaroad 2003)

800mや1500mなどの中距離種目は「陸上の格闘技」と言われるくらい激しい接触がある。相手を押す、ひじ打ちをする、脚を蹴る。時には、前を走る選手の踵を踏んで転ばせようとすることもある。

マラソンの場合、わざとライバル選手の前を走り給水ボトルを取らせないようにしたり、給水ボトルを倒して給水をさせないということまで行われている。しかし、それを責める選手はいない。妨害行為をされないように自己防衛をすれば良い。やられないような実力をつければ良いし、自分が主導権を握ってレースを進めれば良い。

結論的には、妨害行為をされても意に介さずに圧倒的な走力で勝てば良いだけである。

少し話を膨らませると、アフリカ勢、中東勢、北朝鮮などの選手と日本の選手とでは、勝つことの重みが違う。勝つことによって得る対価の大きさが圧倒的に違う。ここで勝てば一生不自由なく暮らせるという背景がある選手は、何が何でも勝とうとする。負けるのが許せなくて相手を殴ってしまうことさえある。更に、負けた選手は、自国に帰ってから国民や関係者から非難を浴びることもある。そういう背景があってスタートラインに立っている。

子供のレースも同じかもしれない。レースに負けたらチーム関係者や両親から叱られるかもしれないし、ガッカリされるかもしれない。いずれにしても、子供はひどく傷つくだろう。

激しいぶつかり合いがあっても良い。それが、相手を妨害するための行為ではなく、自分の力を発揮する為に必死に走っている中で偶発的に起きたものであるなら、それも勝負のひとつである。

大事なのは、勝つことの意味を正しく教えてからレースに臨ませること。勝つことの意味を理解した上でスタートラインに立てば、勝っても負けても学ぶことはある。人間的な成長に繋がる。それが、スポーツの原点である。

超満員の観客の声援を受けて競技が出来るのは本当に幸せなことである。

調子の良し悪しに関係なく大歓声に背中を押されてプラスαの力を発揮できる。

「長い間、苦しい練習に耐えて頑張ってきた甲斐があった」と心から実感できる。

観客の声援と喝采があってこそアスリートのパフォーマンスが最高のモノになる。

スタンドを埋め尽くした観客の声が試合の結果を左右すると言っても過言ではない。

新型コロナの感染状況次第では「無観客」での開催もあり得ると言われている東京五輪。

もし、無観客開催になった場合、どんな選手が力を発揮できるのだろうか。

自分の世界を作れる選手。

自分の演技に自己陶酔できる選手。

自分のイメージの中での「最高」を体現できる選手。

そういう選手が無観客の舞台で「最高のパフォーマンス」を発揮する。

観客の声援が無くても「最高のパフォーマンス」を発揮できる選手がメダルを獲得する。

現在スウェーデンで行われている世界フィギュアスケート選手権。

無観客の中で選手達は最高の演技をすべく「世界一への戦い」に挑んだ。

自分の名前がアナウンスされスケートリンクへと飛び出して行く瞬間の大歓声は無い。

あの大歓声がないことで不安な気持ちを消すことができなかった選手もいるだろう。

ガラガラのスタンドの雰囲気が影響してかゾーンに入れない選手はミスを繰り返した。

そんな中で輝きを放ったのが初出場の17歳・鍵山優真選手だった。

「後悔がない演技ができた」という言葉に持てる力を発揮できた充実感が溢れていた。

決してノーミスの演技ではなかった。あのミスが無ければ…という思いさえある。

しかし、本人は、ミスしたことを含めて満足感に満ちた表情で喜んでいた。

若さ、そして、チャレンジャーという立場を上手く味方につけていた。

観客が居ても居なくても自分の演技をすることだけに集中していた。

一方、これまで観客の声援を独占していた羽生結弦選手は失敗を繰り返した。

登場しただけで大歓声が沸くのが当たり前になっていた面もあったかもしれない。

持ち味の「観客を魅了する表情と仕草」を見せられないのは大きな痛手となったのか。

勝利を掴む為にルーティン化していたとも言える王子様としての振る舞いができない。

魅せる相手が居なかった。気持ちを高める手段を使えなかった。

だから、フリー演技は、勢いに乗れないままのように見えた。

演技後に肩で呼吸する姿も「僕は全て出し切りました」と訴えるキラースマイルも。

多くのファンの心を鷲掴みにする一挙手一投足の全てが無観客では虚しく見えた。

圧巻の演技を見せてくれると心から期待した。しかし、今回の主役は彼ではなかった。

一番の主役はショート3位から逆転して圧倒的1位となったネイサン・チェン選手。

ネイサン・チェン選手も鍵山選手同様に無観客という状況に自分の心を乱されなかった。

いや、寧ろ無観客だからこそフリーでパーフェクトな演技が出来たのかもしれない。

羽生結弦選手のパフォーマンスから学べることは沢山ある。

それは、アスリートのタイプの違いである。

観客を味方につけるタイプの競技者と観客が居ない方が力を発揮できる競技者。

自分がどちらのタイプであるかを考えれば無観客という状況下での戦い方が分かる。

観客を煽り声援を味方につけるタイプの競技者は、無観客では100%を出し切れない。

観客の力を借りずに自分の世界を作って自己陶酔できる競技者は、逆に力を発揮する。

東京五輪代表の選手達には、全く観客が居ない中で戦うことを想定した練習が必要。

自分自身でスイッチを入れて最高のパフォーマンスをするルーティンを見つけること。

それが「無観客」だった場合の東京五輪での戦い方のヒントになる。

将来性があるかどうかは、自分に対する評価の仕方と親の目線で分かる。

将来性のある選手の特徴は、先を急がない心を持っている。

周囲の環境も含めて、先を急がない取り組みをしている。

それは、プロゴルファーの渋野日向子選手の歩みを見ればよく分かる。

プロテストに不合格でも自分のペースを崩さずに継続して努力を続けてきた。

同期が活躍しても、自分の競技に対するスタンスを変えずに取り組んできた。

その日にやるべきことをしっかりとやり切る心を維持してきた。

これが、プロ一年目から活躍をしている土台となっている。

ゴルフだけでなく、サッカー、テニス、野球、卓球、陸上も同じことが言える。

小中学校で活躍して、その後、伸び悩んでしまう選手の特徴は・・・

 ・目先の勝ち負けに一喜一憂してしまう

 ・SNSを頻繁に見て、他者の活躍ばかり気にしている

 ・過去の栄光に縛られて、過去の自分を捨てきれない

 ・現在の自分の武器が何であるかに気付いていない

 ・自分の弱さを認められずに新しい自分を構築する努力をしていない

 ・他人の活躍が原因で自分を見失ってしまう

 ・自分がやりたいことではなく親の顔色を伺いながら競技をしている

 ・自分で考えることをせずに全て親が決めたことを言われるままにしてきた

これらのことが当てはまる選手は、将来的に伸び悩んでしまう傾向にある。

もし、渋野日向子選手が、こんな選手だったら、現在の活躍はなかっただろう。

 ・スーパーキッズと呼ばれて幼少期から全国的に騒がれてきた
 ・親が夢中になって勝ち負けばかりを気にしてきた
 ・プロテストの不合格が、自分のプライドを傷つけた
 ・人は人、自分は自分という気持ちを持てずに育ってきた
 ・優勝した時のボールを一生の想い出として大事に保存してきた

プロ選手になって初勝利した時のボールや全英オープン優勝のボールは手元にはない。

親も、それには全くこだわっていない。ゴルフを続ける過程の中のひとつ。

そう思える心が、渋野日向子選手の強さとなっている。

陸上選手でも、小中学校で活躍した選手が、高校生以降、伸びなくなる選手は多い。

その原因のひとつには、過去の活躍をずっと心のよりどころにしている親の姿がある。

いつまでも、過去の勝利を忘れられずに、ずっと、「あの時は・・・」と言っている。

数年前に活躍した時の姿を待ち受け画面にしたまま変えることができない。

親が、過去から脱却できないのに、子供が未来に向かって進めるはずはない。

将来性を見極める方法。それは、目線が前に向いているかどうか。

過去の栄光にすがることなく、未来図を描いて前進している選手は、将来性がある。

親の目線が、過去ではなく未来に向いていれば、将来的に活躍する可能性が高まる。

もし、現在、伸び悩んでいたり、思うように力を発揮できていない状況であるなら。

過去の栄光との決別、待ち受け画面からの削除が「将来性」をつくる第一歩となる。

大事なのは、過去ではなく、未来へ向かって「新たな一歩を刻む心」を持つことだ。

ある競技でトップレベルだった女子アスリートは、電車の切符の買い方が分からなかった。

そんな彼女は、ある日、電車の切符の買い方を教えてくれた男性と数年後に結婚した。

ある競技で新人選手として活躍し、将来を期待された男子アスリートは恋愛未経験だった。

そんな彼は、先輩に連れられて初めて行った夜の繁華街で出会った女性と駆け落ちをした。

ある競技で日本代表レベルで活躍していた女子アスリートは、男子選手の友達が多かった。

そんな彼女は、悪気がないまま複数の男子と遊んでいたら父親の分からない子を身籠った。

ある競技で人気の男子アスリートは、競技以外の面での露出が多くなり忙しい日々だった。

そんな彼は、身の回りの世話をしてくれたある業界の女性と親密になり貯金を全て貢いだ。

芸能ネタ、週刊誌ネタのような恋愛をしているアスリートは見えないところで存在する。

テレビで見せる顔と違う面を持ったアスリートの姿が実際の生活の中では多々見られる。

トップアスリートである為の条件には、人一倍の集中力がある。

そして、生活の全てを犠牲にしてでも自分が信じた道を突き進む生真面目さも必要。

わき目もふらずに一心に競技に打ち込める性格だからこそトップアスリートになれる。

その反面、競技以外のことは何も知らないという世間知らずな面が命取りになってしまう。

競技に全力を傾けることしか知らないアスリート達は、ある日突然、恋にハマってしまう。

生真面目な性格、ひとつのことに夢中になる性格、世間知らずな性格が深みにハメる。

一度ハマってしまうと誰にも止められない。

一度経験してしまうと誰の声も聞こえない。

自分の知らないことを知っている相手のことを全て信じ切ってしまう。

世の中には、こんなに優しい人がいるなんて信じられないと感動してしまう。

恋愛に対する免疫とモラルの無さはアスリートの弱点であり、欠点でもある。

アスリートは恋愛弱者である。普通の人以上に恋に夢中になってしまう。

アスリートの無知さが生み出す「全てを捨てられるほどハマる恋愛」はホントに厄介だ。

小中高生時代に何の恋愛も経験せずに競技一筋で成長してきたことのツケが回ってくる。

トップアスリートは、幼い頃から「普通ではない特別な生活環境」で育つ。

普通ではない特別な能力があるからこそ世界で戦えるレベルまで成長していく。

普通に生活して、普通に恋愛をして、普通に成長して、社会性を身につけていく。

そんな「ごく当たり前のこと」がトップアスリートほど出来ないという現実がある。

そんな「ごく当たり前の環境」で育てば、恋愛に翻弄されなくて済むかもしれない。

トップアスリートがトップアスリートとして育つが故の大きな障壁が、そこにはある。

アスリートが侵す過ちを「その選手個人のモラルや資質の問題」とするのでは可哀想。

それをスポーツ界だけではなく学校環境や生活環境を含めた視野で考えることが必要。

トップアスリートが知らず知らずに持ってしまう「独特な恋愛気質」を変える取り組み。

それが可能かどうかは、特別な能力を持っている子供の周辺にいる大人次第だと言える。

朝から晩まで練習ずくめの生活を小学生の頃からずっと強いてしまうのはリスクが伴う。

そういう認識を持った大人が周囲でサポートすることが必要なのかもしれない。

「アスリートであるなら常に人々の見本となるような振る舞いをするべき」

「子供達の憧れ的存在であって欲しいし、人々に愛される姿でいて欲しい」

アイドルの恋愛がタブーなようにアスリートも清廉潔白でいて欲しい気持ちは分かる。

アスリートと呼ばれるからには、それを宿命として受け止める覚悟が必要かもしれない。

しかし、アスリートも一般人と変わらない一人の人間である。

ずっと清廉潔白なままではいられない。

ずっとみんなのアイドルのままではいられない。

周りが見えなくなってしまうほど夢中になる大恋愛をする。

練習するよりも恋人と一緒に居たいと思うことは普通にある。

時には、その相手が好きになってはいけない人であることもある。

時には、同時に二人以上の相手を好きになってしまうことだってある。

長年練習漬けの生活をしている反動で深くのめり込んでしまうこともある。

逆に恋愛の免疫力がないので練習が出来なくなるほどの大失恋をすることもある。

付き合っていると思っていた相手には本命の恋人がいて自分は遊ばれただけだった。

相手に依存してしまい給料の殆どを貢いで、それを愛情だと思ってしまうこともある。

幼少期から、ずっと競技生活をしてきたアスリートには免疫力とモラルが欠如している。

恋愛にハマってしまうとトコトン突き進んでしまうのがアスリートの性的な面もある。

そのまま目を覚ますことが出来ずに道半ばで競技生活を終える選手もいる。

基本的にアスリートは、自分の魅せ方を知っている。

ある意味、それが出来るからアスリートとしての価値がある。

アスリートは、一般の人から見たらキラキラ輝いている。眩しいくらいの存在感がある。

だから、自分は何もしなくても、いつの間にか素敵な人が向こうからやってくる。

そして、知らず知らずのうちに親しくなり、心の拠りどころ的な存在になる。

スポーツの世界しか知らないアスリートは、「外の世界」の人に憧れる。

自分のことを敬って接してくれるから大事にされている感覚になる。

見たことがない世界に連れていってくれるから大人に見える。

自分が知らないことを教えてくれる優しさにハマる。

アスリートが話題になるニュースの背景には、アスリートであるが故の事情がある。

アスリートの恋愛事情を何回かに分けて解説していきたい。

田中希実選手だけが大きくクローズアップされた日本選手権女子1500m決勝。

田中選手の走りは、他を寄せ付けない圧倒的な速さと強さがあった。

誰が見ても田中選手の走りに目が釘付けになるレースでもあった。

しかし、あのレースには、女子長距離界の未来を託せる人材が複数人いた。

見る人が見れば、「このレースの収穫は大きい!」と感じたはずだ。

前提として…決勝に進出した選手は、いずれも素晴らしい選手である。

どの選手にも大きな飛躍が期待できるということを最初に申し上げておく。

<日本選手権2020・女子1500m決勝>
  1.4:10.21 田中希実(99)    (豊田織機TC・兵庫)
  2.4:15.62 米澤奈々香(04)   (仙台育英高・宮城)  PB
  3.4:16.18 後藤 夢(00)    (豊田織機TC・兵庫)   PB
  4.4:16.33 卜部 蘭(95)    (積水化学・東京)
  5.4:18.65 吉村玲美(00)    (大東文化大・神奈川)
  6.4:18.99 清水真帆(95)    (ヤマダ・群馬)    PB
  7.4:20.24 髙松智美ムセンビ(00)(名城大・大阪)
  8.4:22.53 福田有以(95)    (豊田自動織機・愛知)
  9.4:22.91 道下美槻(01)    (立教大・東京)

10.4:23.26 菊地梨紅(97)    (肥後銀行・熊本)
11.4:27.22 和田有菜(99)    (名城大・長野)
12.4:37.18 樫原沙紀(01)    (筑波大・広島)


※アンダーラインの選手は、元中学チャンピオン(全中陸上優勝経験者)。
※ピンク文字の選手は、認知度は低いが今後の成長が大いに期待できる注目選手。


女子1500m決勝を走った12人は、いずれも過去の実績が素晴らしい選手ばかり。

将来性十分。日本の未来を背負って立つ可能性に満ちた選手達である。

予選も含め全国中学陸上優勝経験者数名が日本最高峰の舞台に立った。

決勝に進出した12人中5人が、かつての中学チャンピオン。全国大会優勝経験者。

田中希実、米澤奈々香、高松智美ムセンビ、福田有以、樫原沙紀が、それに当たる。

決勝で2位に入った米澤奈々香選手は、現在、仙台育英高校の2年生。

静岡県(浜松北浜中学)から新たな可能性を求めて宮城県の仙台育英へ進学した。

米澤選手が決勝で出した記録(4分15秒62)は、高校歴代4位にランクされる。

田中希実選手の高校時代の記録(4分15秒43・高校歴代3位)に迫る好記録である。

女子選手の成長曲線としては、田中選手を超える可能性があるとも言える。

注目選手の一人、6位に入った清水真帆選手(ヤマダ電機)も静岡県出身。

中学時代の記録は、400m61秒91、800m2分14秒37、1500m4分32秒85。

静岡県の公立中学校から福岡県の筑紫女学園高校へ進学。

その後、大阪学院大学へ進学。大学卒業後は、ヤマダ電機へ入社。

中学卒業後、8年が経過して自己記録を4分18秒99まで更新させた。

学生時代には、インカレチャンピオンにもなっている逸材。

今後の活躍が大いに期待できる選手と言って良い。

高松智美ムセンビ選手は、陸上ファン以外の一般の方にも知られている超有名選手。

今シーズンは、少し調子を落としているが、潜在能力の高さは疑う余地がない。

1500mのスピードを活かして5000mや1万に距離を延ばして可能性を拡げるのか。

1500mと3000mで日本のトップ。更に力をつけて日本記録を狙うのか。

学生競技者からの脱皮が出来たら田中選手に匹敵する選手になる可能性は十分にある。

福田有以選手(須磨学園高校→豊田自動織機)は、現中学記録保持者である。

中学記録保持者が、その後も第一線で活躍し、日本選手権決勝の舞台に立っている。

福田選手の活躍は、現在、陸上をしている小中学生にとって大きな希望となっている。

須磨学園時代には、全国高校駅伝での区間賞も獲得している。

実業団選手としての活躍も申し分ない。所属企業にも十分に貢献している。

それでも、本来、彼女が持っている潜在能力を発揮し切れていないとの見方もある。

なにかのきっかけで田中選手並みの大化けをする可能性があるのは間違いない。

日本記録を更新する可能性がある選手の一人であると中高生は期待している。

樫原沙紀選手(広島県立呉三津田高校→筑波大学)も同様に小中学生の見本となる選手。

駅伝名門校に進学せずに県立高校で文武両道を実践。筑波大学へ進学している。

そういう道もあることを示している点で陸上界への貢献度は高いといえる。

ある日突然、日本のトップへ躍り出る姿が見れると期待できる選手である。

昨年の日本選手権覇者で今年は4位となった卜部蘭選手も実は、全中陸上2位の選手。

中学時代から各ステージにおいて第一線で活躍する卜部のファンは多い。

東京の白梅学園高校から東京学芸大学へ進学。インカレでもスター選手だった。

こういう花のある選手の活躍は、ジュニア選手達の憧れであり、夢を与える存在。

恵まれた体型を活かしたダイナミックな走りに魅了されている陸上ファンの願い。

それは、「卜部選手にも日本記録を更新して欲しい!」という期待だ。

「卜部さんみたいな選手になりたい!」と夢を膨らませる中高生は本当に多い。

特に東京都の小中高校で陸上をしている選手からの期待は毎年高まっている。

予選で自己記録を更新し決勝進出を果たした道下美槻選手(立教大学)にも期待が集まる。

スタート時にアナウンサーが紹介した通り、道下は、東京の順天高校を卒業している。

順天高校は、関東圏、いや、全国の駅伝強豪校の中でも入学難易度が高い進学校。

「陸上だけをしていては、入るのが難しい高校」として認知されている。

道下は、文武両道を実践しながら立教大学へ進学し、今年、大きな飛躍を遂げている。

将来の伸びしろは、十分にある有望選手。今後もステップアップしてくれるだろう。

その他、決勝へ進出した選手達は、様々な形でジュニア選手達に夢と希望を与えている。

それぞれの成長過程は違っても将来の可能性と言う面では、どの選手にも期待が持てる。

今年の日本選手権女子1500m決勝を見て、女子中長距離界の未来は明るいと感じた。

「早熟」という言葉がまかり通ってしまう陸上界の問題点は幾つかある。

短距離種目も含め多くの全中チャンピオンは、この舞台に立つことなく引退する。

未来に対して夢が持てない雰囲気があり、文武両道という文化も無かった。

スポーツの名門校や駅伝強豪校を出てくると心が疲弊している選手が多かった。

勉強をしなくても大学へ進学出来てしまう悪しき文化が「考える力」を奪ってきた。

「考える力」が無いから「早熟」だとか「伸び悩み」という現象を生んでいた。

しかし、近年は、「考える力」を選手に与える指導者が増えてきた。

ただ闇雲に走らせるのではなく「考えて走る」を教える指導者が結果を出している。

田中希実選手は、関西屈指の名門大学である同志社大学に通っている。

その時点で勉強をしなくてよい環境とは違うのが理解出来る。

近年、関西の名門大学が女子駅伝に力を入れているのも良い傾向。

基礎学力の高い選手が増えてきたから偏差値の高い大学へ進学も出来ている。

「考える力」がある選手は、バーンアウトする確率が少ないとの見方もある。

それは、関東でも同じかもしれない。

筑波大学や立教大学への進学を希望する生徒には、それ相応の学力がある。

言われたままをするのではなく、自ら考えて行動する力を持った選手が生き延びている。

「考える力」がある選手は、指導者の有無に関係なく大きく成長する可能性がある。

時代が変わってきたことを女子1500mを走った選手の背景から読み取ることが出来る。

声の大きい指導や盲目的に従わせる文化が強かった女子長距離界において…

将来の夢を実現させる為に必要な心を育てる指導者が増えてきたのかもしれない。

「将来への伸びしろ」を作る指導者が今後も増えていくことを強く願う。

箱根駅伝ではメシは食えない!というセリフは、選手達に届いているだろうか。

毎年、12月中旬になると各校のエントリーリストがメディア関係者に発表される。

そして、エントリーに入れなかった各校のエース級有力選手などが話題になる。

それはそれでドラマがあり、箱根駅伝の中継では使われるネタとなる。

箱根駅伝の特番でも、きっと、そのネタを使って感動のドラマにするだろう。

メンバーとして走った姿がドラマになり、走らなくてもドラマにする。

付き添いをしている姿をクローズアップして感動の物語に仕立て上げる。

そうやってテレビ局は視聴率を稼ぎ、莫大な利益を得る。

冷静に考えてみると箱根駅伝の持つコンテンツとしての価値は計り知れない。

ボランティアでテレビ中継はしないし、ボランティアでスポンサーにはならない。

スポーツメーカーも総力戦でプロモーション戦略を練る。

絶大な宣伝効果がある箱根駅伝を多くの企業が莫大な資金を投入して盛り上げる。

社会人経験のない学生達には天文学的な数字のお金が飛び交っている。

箱根駅伝を価値の高いコンテンツと考えた場合を想像して欲しい。

一から考え企画して商品として育てるのは容易なことではない。

どんなに優秀なプロデューサーでも簡単には作ることが出来ないものである。

それが時代の流れにのって付加価値をつけながら向こうからやってきた。

時代の流れと共に箱根駅伝は進化し、化け物コンテンツとなった。

昔から長きにわたって続いてきた関東ローカルの学生スポーツが大化けした。

箱根駅伝に出場する選手は、お正月の特別番組の登場人物と考えて良い。

お正月のテレビには、良く知られた人気のある芸能人が出演する。

知名度と好感度を持った有名芸能人がお正月番組の顔となる。

パッと出の芸能人ではお正月のテレビには出演できない。

しかし、箱根駅伝という化け物コンテンツは、無名選手を一日でスターにする。

お正月のテレビ番組に出てくる芸能人にも負けない知名度を得る。

それが箱根駅伝の恐ろしさである。

アイドル一人を育てるのに一体いくら先行投資をしなければならないか。

特番の顔になるためにどれだけの月日をかけて知名度を上げなければいけないか。

それを良く知っている広告代理店の関係者は、こう話してくれた。

優勝争いをする大学というのを条件とするならば・・・

箱根駅伝選手は、一時間テレビに映り続けて名前と大学名を連呼される。

それを商品価値として見た場合、選手一人へのギャラは数千万でも足りない。

それだけの価値を箱根駅伝の選手は持っている。

しかし、箱根駅伝選手ではなくなった途端、彼らの商品価値は無くなる。

限りなくゼロに近いと言っても良い。

箱根駅伝という看板を背負っているから彼らは輝けるし、存在価値を見出せる。

箱根駅伝という看板を下ろしたら、彼らは普通の人となる。

それを自覚しなければ、大学卒業後に活躍することは出来ない。

いつまでも箱根駅伝のスターではいられない。

キャーキャー騒がれることは夢の中の物語であって、それは現実ではない。

大学卒業後、夢が覚めて現実の社会に出た時に自分の無力さを感じるだろう。

箱根駅伝選手が箱根駅伝選手でなくなった時の無力感こそが燃え尽き症候群だ。

どんな価値が自分にはあり、社会人になった時に何を生み出せるのか。

それを冷静に考えて大学四年間を過ごさないと卒業後にただの人になってしまう。

今やるべきことは沢山ある。

エントリーから外れても自分の価値が分かっていれば何も問題はない。

箱根駅伝ではメシは食えない!

大事なのは、箱根駅伝を卒業してからのことを考えておくことだ。

その後の人生をどのように生きていくか。

箱根駅伝の看板を下ろしたあと、どう自己表現をして己の価値を高めていくか。

箱根駅伝が終わってひと段落した今だからこそ、それを考える期間にして欲しい。

記録の壁を破る 〜その1〜からの続き。

男子100mの9秒台、男子200mの19秒台、女子800mの1分台などは、この2年以内に壁を破る選手が複数人出てくる可能性がある。他種目も含めて東京五輪が近いタイミングだからこそ、日本記録が破られていない種目での記録更新が期待される。これまでと違う雰囲気が選手の背中を押す原動力になる。

”記録の壁”を破るヒントは、達成出来そうな記録の”更にその先”を見据えたトレーニングをすること。9秒台という漠然とした目標ではなく、より具体的な記録を目指すことが大事だ。例えば、100mなら9秒86〜9秒91、200mなら19秒90〜19秒95、女子800mなら1分56秒〜57秒をイメージしておくと、”一気にブレイクスルーする”可能性が高くなる。

「百分の一秒でもいいから日本記録を更新したい」という謙虚な姿勢は、精神的な気負いなくチャレンジできるという面ではプラス要因になるかもしれない。しかし、それでは、ビックリするような記録は出ない。爆発的な突破力がないとブレイクスルーは起きない。無意識に抱いてしまっている心の壁を取り払うのは簡単ではない。しかし、他者が聞いたら笑われるような高い目標を堂々と口に出して言える”心の余裕”と”タフさ”を身につけることが、不可能を可能にする最も大切な要因となる。

それにしても、春からレースが多すぎる。選手の体力を酷使し過ぎている。海外で行われているグランプリシリーズを日本で真似しても成果には繋がらない。そういうスタイルは、日本人には向かない。同じ筋肉を同じように酷使していては、同じような記録しか出ない。

例えば、停滞している種目のひとつに女子800mがある。現在のトップ3は、北村、塩見、川田であるが、塩見、川田の記録は、2分02秒〜04秒から殆ど動かない。現状のままでは1分台は難しい。塩見、川田の走りには、高校生の時にあった柔らかい動きがなくなっている。カラダから漲るエネルギーがない。全身のバネをフルに使って走っている感じがしない。勢いを感じないのだ。北村が2分00秒で走った時に見られた「しなやかな動き」と「力強さ」そして「カラダのキレ」がない。世界リレーでの塩見の走りは、どうみてもキレがない。どうして、そんな簡単なことに気付かないのだろうか不思議に思う。

「目の前に山があるから登る」のがアルピニストの”性(さが)”であるように、目の前に試合があれば選手は全力で走る。それが、国際大会や国内主要大会と位置付けされたものであれば、尚更、全力で臨もうとする。それをコントロールするのがナショナルチームの役目なのだが、どう考えても「使えるだけ使う」ようにしか見えない。春からカラダを酷使していない北村が、今秋に記録を更新する可能性の方が遥かに期待できる。ナショナルチームに入って言われるままに大会に出場していても記録には結びつかない。結局は、独自の路線を進むことが、”記録の壁”を破る一番の近道になる。


”記録の壁”というのは、一度破られたら一気に歴史が動いていく。日本人が一番理解しやすいのは女子マラソンだ。高橋尚子が2時間20分の壁を破って世界記録を樹立したのが、良い例である。

下記は、女子マラソンの世界ランキングである。これを見ると”記録の壁”がどのようにして破られて、歴史がどのように変わっていったのかが良く分かる。

<女子マラソンの世界ランキング> (2019.5.16時点)
  1.2:15:25 ポーラ・ラドクリフ      (イギリス:29:ロンドン:2003.4.13
  2.2:17:01 メアリー・ケイタニ―     (ケニア:35:ロンドン:2017.4.23
  3.2:17:08 ルース・チェプンゲティッチ  (ケニア:24:ドバイ:2019.1.26
  4.2:17:41 デベレ・デガファ       (エチオピア:28:ドバイ:2019.1.25
  5.2:17:56 ティルネシュ・ディババ    (エチオピア:32ロンドン:2017.4.23
  6.2:18:11 ラディス・チェロノ・キプロノ (ケニア:35:ベルリン:2018.9.16
  7.2:18:20 ブリジット・コスゲイ     (ケニア:25:ロンドン:2019.4.28
  8.2:18:31 ビビアン・チェルイヨット   (ケニア:34:ロンドン:2018.4.22
  9.2:18:34 ルティ・アガ         (エチオピア:24:ベルリン:2018.9.16
10.2:18:41 キャサリン・ヌデレバ     (ケニア:29:シカゴ:2001.10.07
24.2:19:46 高橋尚子           (日本:29:ベルリン:2001.9.30
37.2.20.43 テグラ・ロルーペ       (ケニア:26:ベルリン:1999.9.26
50.2:21:26 イングリッド・クリスチャンセンノルウェー:29:ロンドン:1985.4.21

イングリッド・クリスチャンセンから歴史が動き始めた。クリスチャンセンが女子マラソンの世界記録を近代的な記録へと飛躍させたのが1985年。今から34年前のことになる。2時間30分を切れる選手が、まだ数名しかいない時代、2時間21分という記録が出たと知った時には「そんな記録があり得るのか?」と衝撃を受けた。彼女が、マラソンの世界記録を樹立した翌年、5000m(14分37秒33)と10000m(30分13秒74)の世界記録も樹立している。クリスチャンセンの強さは、他を圧倒していた。今で言うなら、短距離のウサイン・ボルトの強さくらいのインパクトがあった。33年が経過している今日でも、彼女の記録は世界トップレベルで通用する。そんな、”とてつもない記録”と言われていたマラソンの世界記録を14年ぶりに更新したのが、ケニアのテグラ・ロルーペだ。「やっぱりアフリカ勢か。これから先もアフリカ勢が記録を塗り替えていくだろう。」と関係者は思っていた。しかし、2時間20分の壁に挑んだのは、今は亡き小出監督だった。

小出監督は、1970年代から女子マラソンで世界記録が狙えると真剣に考えていた。当時、千葉県立佐倉高校の教員だった小出監督は、それまで100mをしていた女子生徒に長距離への変更を言い渡した。当時の高校女子長距離種目は、800mしかなかったが、「800mを走る為には距離を踏まないといけない。だから、俺と一緒に走りにいくぞ!」と言って20㎞の走り込みをさせた。トコトコ・トコトコ、二人で何時間も走る。来る日も来る日も、それを繰り返した。道路工事をしていた作業員が「あの二人は、一日中走っているなぁ」と感心するくらい、二人でずっと走り続けた。そんな練習の甲斐あって、その生徒は、初マラソンで2時間41分33秒という当時日本歴代2位の記録を出すまでに成長した。その時、小出監督は、こう思ったという。

「高校生が限られた時間の中で練習をして日本のトップレベルになるなら、才能に恵まれた選手に練習を積ませれば必ず世界記録が出せる。世界で通用するのは女子マラソンだ。」

それから、20年後、小出監督は高橋尚子とともに世界記録を樹立した。

世界記録を狙うと宣言し、ベルリンマラソンを日本でも生中継で放送した。日本時間の夕方、日本国民はテレビにくぎ付けとなった。そして、宣言通りの世界記録樹立。日本国民は大いに盛り上がった。王者が王者であることを証明したレースとなった。

しかし、”記録の壁”を一旦破ってしまえば、後に続く選手はすぐに出てくる。高橋尚子が2時間20分の壁を破り前人未到の記録を打ち立てた1週間後。ケニアのキャサリン・ヌデレバが高橋の記録を1分以上短縮する2時間18分41秒で走ってみせた。記録というのは、そうして塗り替えられていく。

現在の世界記録である2時間15分25秒(ポーラ・ラドクリフ)も、やがて破られる日がくる。男子マラソンが2時間の壁を超えたら、女子マラソンも2時間15分を切る選手が間違いなく現れるだろう。そう遠くない未来に、そういう時代がやってくる。それが、日本人選手であって欲しいと願うと共に、小出監督のような「カタにとらわれない規格外の視野と夢を持った指導者」が現れることを期待したい。

日本長距離・マラソン界の歴史を作った最高の指導者

〜その3へつづく〜

<解説①> 〜創価大学が3分以上ものリードを守れなかった理由〜

 テレビ観戦していたチームメイト、学校関係者、大会運営者、メディア、実況担当者など全ての人が創価大学の初優勝シーンを観れる思っていた。3分以上のリードがあれば、余程の大ブレーキをしなければ逃げ切れると思っていた。もし、創価大学が”まぐれ”で先頭を走っていたなら「どうせ抜かれるだろう」と高を括って観ているので逆転されても驚きは無かった。「箱根駅伝の名門大学とは、力が違うから仕方ない」と心づもりをして観ていたし、1区で区間賞を獲得した法政大学が2区で大きく順位を落としたように「すぐに追い抜かされる」と気楽に見ていられた。優勝候補に上っていない大学がトップに出ると「落ちていく姿を期待して、抜かれるシーンを待っている展開」になるのが常だ。しかし、創価大学の選手達は大崩れしなかった。往路に続き復路の選手達も安定感ある走りは健在。不安要素を感じない逞しくて立派な走りだった。多少追い上げられても先頭を走る強みを最大限に活かして堂々と走っていた。だからこそ「このまま逃げ切ってしまうだろう」と多くの方が確信して疑わなかった。9区までの選手達は、完璧に近い走りでトップを独走していた。10区の選手も同じように笑顔で快走するだろうとゴール後の喜ぶ姿をイメージしていた。周囲の誰もが「このまま逃げ切って初優勝を飾る!」と思っていただろう。そんな雰囲気が周囲に漂っていたからこそ、アンカーを任された選手には今まで経験したことがない大きなプレッシャーがのしかかっていたのではないかと推察できる。プロゴルフツアーの最終日の最終ホール。2打差リードしていながら30㎝のウイニングパットが決まらずにまさかの大叩き。掴みかけていた初優勝を逃してしまった選手の姿と重なった。得体の知れない重圧に自分が自分でなくなってしまう。冷静だと思っていても全くカラダが動かなくなる。競技は続いているので、そのままプレーは続けているが明らかに普段のプレーとは違う。”あり得ないプレー”をしてしまう。絶対に入る距離のウイニングパットを外してしまう。「このパットを決めればプロツアー初優勝。数千万円の賞金を獲得出来る!」という今まで経験したことのない究極のシチュエーションが我を忘れさせる。

 人は、今まで経験したことのない状況下に身を置くと必要以上に緊張する。今まで見たことがない景色を見ると一時的なパニックを起こしてしまう。どのように振る舞ったらいいか分からなくなるからだ。このパットを入れたら優勝。見たことのない大金を手にする。そういう経験がない選手は、手が震えてカラダが固まってしまう。だからメンタルトレーナーは、イメージトレーニングを推奨する。ライバルに勝って優勝し、観衆に手を振るシーンを何度も何度もイメージさせて「初めて見る景色」を過去に何度も見たことがある景色として脳に認識させる。これが勝者のイメージトレーニングとして活用されている。駅伝も同じことが言える。この襷をゴールまで繋いだら優勝。しかもそれが箱根駅伝の総合優勝となれば、正気ではいられない。優勝候補に挙げられるような大学で優勝テープを切るイメージが出来ている大学なら無難にまとめられただろう。しかし、初めての往路優勝に続き、復路でも独走して初の総合優勝となれば頑張る気持ちとは裏腹に精神的に混乱しても当然である。

 人のカラダは、繊細だ。憧れを抱くのではなく現実的に箱根駅伝優勝を達成する明確なイメージが出来ていないとカラダが言うことを効かなくなるのは当然である。ただ、襷を繋ぐだけ。大快走などしなくていい。普段の練習通りに走って、ゴールまで襷を届けるだけ。それが出来なくなってしまうのが、箱根駅伝優勝の重みであり、優勝する難しさだと改めて気付かされた。違う視点から考えてみると、もし、2位との差が1分程度で走っていたら優勝できた可能性もあったと分析することも出来る。1分差よりも3分差の方が気が楽だと考えるのは、駅伝を走った経験がない方の発想。あるいは、余裕で走れるくらいの大差があった方が楽に走れるというのは、経験豊富な常勝軍団の選手である。箱根駅伝の出場回数が片手で数えられる大学の場合、3分以上の差があることで走り始めに迷いが生じてしまう。想像もしていなかった大差がつくと、一瞬、緊張の糸が切れて、それを仕切り直さなくてはいけなくなる。「必死に逃げるしかない」というシチュエーションと「普通に走れば余裕で勝てる」というシチュエーションでは、経験の浅い大学にとって後者の方がプレッシャーを感じる。1分くらいの差で襷を貰った方が、気持ちに迷いがなく「抜かれたら抜かれた時だ」と開き直って走れるので結果的に好走することができる。開き直れるシチュエーションの方が、潜在能力を引き出すことができる。やはり3分以上の差があるシチュエーションは、難しい。心に迷いが生じる。「自重してスタートしても大丈夫だろう。暫く走ってから少しずつビルドアップしていこう」。そんな気持ちが心に芽生えてしまうと逆にリズムを崩してしまう。結果的に勢いに乗れないまま最初から最後までカラダが重く感じて走ってしまう。これが、駅伝独特のメンタルとフィジカルとのネガティブ相互関係である。

 誰もアンカーを走った選手を責めることは出来ない。彼は、精一杯頑張った。あの瞬間に出来る最大限の力を発揮して、最高の走りをしようと全力を尽くした。それ以外のなにものでもない。ただただ、創価大学の選手達の健闘を称えたい。創価大学の選手達よ。絶対王者や優勝候補の大学を抑えての準優勝。堂々と胸を張って共に戦ったチームメイトと2021年の箱根路を沸かせた自分達の頑張りを誇りにして来年へのステップにして欲しい。

テレビ中継をするからには、高い視聴率を求められるのは当然だ。

普通にレースが行われているだけでは視聴率はアップしない。

そこにハプニングがあるから視聴率は跳ね上がる。

<テレビ局が欲しいポジティブなハプニング>
1.ごぼう抜きする。
2.区間新記録を出す。
3.ニュースターが出現する。
4.笑顔で快走する爽やかな姿を見せる。
5.チームメイトとの絆を感じるタスキリレー。
6.家族・友人・恩師らへの感謝を込めた感動ラン。

<テレビ局が欲しいネガティブなハプニング>
1.フラフラになる。
2.途中何度も立ち止まる。
3.襷が次の走者に繋がらない。
4.惜しくも繰り上げスタートになる。
5.優勝候補の大学が予想外の大敗を喫する。
6.肩を落として泣き崩れる学生達の姿を映し出す。

こういうシチュエーションは、喉から手が出るほど欲しいと言うのが本音である。

今年の箱根駅伝往路では、昨年の王者・青山学院大学がよもやよもやの大失速。

陸上ファンやテレビ局・大会関係者の期待を大きく裏切る苦しい展開となっている。

解説をしている瀬古氏は、「予想外の展開」だと言うが、こうなることは予想出来た。

昨年の優勝は、東海大学をはじめとする他大学が「予想外の失速」をしてしまっただけ。

青山学院大学の王者返り咲きに関係者は盛り上がり「絶対王者」などの見出しをつけた。

しかし、青山学院大学が低迷する”前兆”と強さの”綻び”は、昨年から既に現れていた。

何故、いきなりこのような結果になってしまうのか。

その理由は、常勝軍団だった時の姿を忘れられずにいるからである。

ダントツに強かった「絶対王者青学」という亡霊を捨て切れずにいるから。

今年の青山学院大学の選手達のメンタル状態は、極めて不安定だったと言える。

箱根駅伝に臨むにあたり箱根路を走る目的が、本来あるべきモノとは違っていた。

青山学院大学の選手達は、駅伝をしていない。

目の前にいる他大学の選手と競い合うことに集中していない。

過去に何度も優勝してヒーロー気分を味わった自分達の姿を再現しようしていた。

余りにも勝負弱くなっていた。

余りにも自分達の力を過信していた。

余りにもメディアの甘い言葉に乗せられていた。

駅伝を走る以前に自分達の足元がふらついていることに気付かなかった。

苦しさに顔を歪めて走る彼らの表情は、上位を走れないことに絶望していた。

以前のように多少遅れをとっても猛追し大逆転する気迫は感じられなかった。

気迫がないと言うよりも戦意を喪失しているような印象さえ受けてしまった。

辛かった。悲しかった。残念だった。「何やってんだ!」と叫びたくなった。

爽やかで強く逞しい走りが持ち味の青山学院大学の選手達が苦しむ顔など見たくない。

過去の自分達の姿を追い求めるがあまり、伸び伸びと走る自分達の強みを忘れていた。

往路の低迷によって選手達の目は覚めるだろう。

いや、覚めて貰わなくては、面白みが無くなってしまう。

このままズルズルと10位前後を走ったままゴールして欲しくない。

復路では、自分達の強さと清々しさを取り戻し持っている力を出し切って欲しい。

泥臭くてもいいから弱さを見せないで強気な走りを見せてくれることを期待したい。

<2021年に期待したい出来事ベスト10>

  1.男子1500m日本記録更新
  ☆3分37秒40切りを3選手が達成!
  ☆達成する確率80%
(期待値込)

  2.男子100m日本記録更新
  ☆9秒95切りを2選手が達成!
  ☆達成する確率80%(期待値込)

  3.男子400m日本記録更新
  ☆44秒75切りを2選手が達成!
  ☆達成する確率50%

  4.女子800m日本記録更新
  ☆1分59秒80切りを3選手が達成!
  ☆達成する確率10%

  5.女子100m日本記録更新
  ☆11秒20切りを2選手が達成!
  ☆達成する確率20%

  6.女子400m日本記録更新
  ☆51秒70切りを2選手が達成!
  ☆達成する確率20%

  7.男子800m日本記録更新
  ☆1分45秒30切りを2選手が達成!
  ☆達成する確率50%(期待値込)

  8.女子1万m日本記録更新
 
 ☆30分10秒切りを達成!
  
☆達成する確率90%(期待値込)
 
  9.男子5000m日本記録更新
  ☆13分05秒切りを2選手が達成!
  ☆達成する確率40%

10.女子5000m日本記録更新
  ☆14分50秒切りを3選手が達成!
  
☆達成する確率90%(期待値込)


記録は、思わぬタイミングで出ることがある。シューズ開発の進化もプラス要素となり大幅な記録更新が見られる可能性は十分にある。現実的に射程圏内にあるモノともう少し機が熟するのを待たなければならないモノある。難しいと分かっていてもチャレンジすることが大事。どんな時も最大限の準備をして大会に臨んでいれば、いつか必ず達成する日が訪れる。

過去のどんなレースよりも盛り上がることが予想される2021年箱根駅伝。

沿道での観戦自粛。ステイホームしてテレビ観戦をお願いしている状態であるが…

行くなと言われれば行きたくなる。

沿道で観戦するなと言われれば沿道で観たくなる。

複数人で応援するなと言われれば仲間と一緒に行きたくなる。

それが人の行動の本質であることは、様々な研究から分かっている。

全日本大学駅伝では、多くの人が沿道やゴール地点で声援を送っていた。

全国高校駅伝でも明らかに選手に声援を送っていると分かるグループが立っていた。

箱根駅伝では、幾つかのコロナ対策が施された中、どんな光景が見られるのだろうか。

沿道での観戦自粛は、現実問題として殆ど無視されることは明らかである。

襷リレーが行われる中継場所で”密”にならない箱根駅伝などあり得ない。

自分の目の前を全力で走って行く選手を少しでも近くで観たいのは当然である。

頑張って走っている選手達に思わず声を掛けたくなる衝動を抑えることは出来ない。

各大学の選手が必死に頑張っているんだから自分も沿道での観戦を頑張る。

そんな決意を抱いている箱根駅伝ファンは、箱根路に集まってくる。

年の瀬となり外出を自粛するどころか都内には人が増えている。

一日の感染者数が1000人に近づいているのに危機感がない。

そんな中で開催される箱根駅伝は、一体、どうなるのか。

2021年箱根駅伝で観られる光景を想像すると恐ろしい。

コロナ禍でのイベント開催を良く思わない人がいる。

自粛させるくらいなら開催するなと怒る人がいる。

そんな人が沿道からコースに飛び出して来る。

制止を遮って怒りをぶつける事態になる。

全国高校駅伝でも走行妨害が起きた。

箱根駅伝でも起きないか心配だ。

どこまでリスク回避出来るか。

優勝争いが楽しみな一方で…

心配な要素も沢山ある。

選手を危険な目に遭わせることなく安全な大会運営がなされることを期待したい。

東京五輪マラソン代表選手らも走るニューイヤー駅伝。

旭化成、トヨタ自動車、Honda、富士通などが注目されている。

「旭化成と富士通の一騎打ちが楽しみ!」と2強対決を期待する声もある。

2021年東京五輪イヤーのスタートを飾るに相応しい好レースが見られるだろう。

ライバルチームとの壮絶なバトルが振り広げられる中で輝きを放てる選手は、誰か?

かつてのニューイヤー駅伝は、本当に見応えがあった。

「これぞ実業団選手!」という大快走を見せてくれた。

中学生や高校生が「おー!スゲー走り!ヤバい!」と興奮する激走があった。

チームの勝ち負けがあるのでチームへ貢献できる走りをするのが前提となるが…

「チームの勝ち前など関係ない!」

「ペース設定なんて気にしない!」

「最初からブッ飛ばすだけ!」

「俺は、俺の走りをする!」

「思いっきり突っ走る!」

そんな気迫のこもった走りが見てみたい。

かつてないハイレベルのレースが見てみたい。

役者は揃っている。これ以上ない舞台が整っている。

出場する全ての選手が、爆走!激走!疾走!を見せてくれることを大いに期待したい。

フィギュアスケート全日本選手権を圧巻の演技で優勝した羽生結弦選手。

優勝インタビューでは、コロナ禍にある今の世界情勢を理解しての言葉を綴った。

世界選手権に対しての意気込みを訊かれた際、その対応が素晴らしかった。

テレビ局や協会関係者としては、「世界選手権でも頑張りたい!」と言って欲しかった。

しかし、羽生選手は、「世界選手権があるか分からないですが…」と切り返し…

「それよりも…世界に平穏が訪れて欲しい」と言葉を続けた。

素晴らしい人間性。素晴らしい気配り。素晴らしい視野の広さ。

「五輪を開催して欲しい」

「自分は、その為に頑張っている」

「東京五輪が開催されると信じている」

そんな”自分本位”な考えしか出来ない他競技の選手とは器の大きさの違いを感じた。

羽生選手の言葉から、女子長距離の新谷仁美選手の言葉を思い出した。

「自分達の気持ちなんて関係ない」

「開催して欲しいというのは、選手の我が儘」

「国民が開催を望んでくれて応援してくれることが大事」

やはり、本物のトップアスリートは、周囲が良く見えている。

自分達の活動と一般の社会生活とは、リンクしていることを理解している。

まずは、世界中に平穏が訪れてくれることが大事だとキッパリと言える人格の持ち主。

羽生結弦選手の言葉から学べることは沢山ある。

「トップアスリートとは、こうあるべきだ」という手本になる。

本物の一流選手がとるべき言動を他競技の選手にも教えてくれている。

コロナ禍だからこそ周囲を冷静に見渡して発言できるスキルを養って欲しい。

それが、新型コロナが収束した時の日本の経済の立て直しに役立つだろう。

トップアスリートの最高のパフォーマンスは、間違いなく国益に繋がる。

一人でも多くのアスリートが、羽生選手のような感覚をもつこと。

自分本位ではない考え方で五輪や世界選手権への意欲を語ること。

それが出来てこそ、コロナ収束後の活躍を国民が期待してくれるだろう。


1996年アトランタ五輪は、日本長距離界の歴史をつくった大きな意味のある大会となった。

女子マラソンで有森裕子さん(当時・リクルート)が2大会連続のメダル獲得(銅メダル)!

女子10000mで千葉真子さん(当時・旭化成)が5位、川上優子さん(沖電気)が7位!

女子5000m決勝で志水見千子さん(当時・リクルート)が日本記録の快走を見せ4位!!

この動画は、志水見千子さんが5000m予選を走っている姿が写っている。

オリンピックの舞台で堂々と予選を勝ち抜く姿には日本中が湧いた。


(6282 Olympic 1996 5000m Women by Basil Sage)

3000mを通過するところから動画は始まっている。

先頭集団には、当時、3000mと10000mの世界記録を持っていた王軍霞(中国)。

のちにマラソンの世界記録保持者となったポーラ・ラドクリフ(英国)。

その他、当時の世界トップレベルの選手が集まった中で日本の志水さんが走っている。

3000mの通過は9分24秒93。この1周のラップは、75秒05。

当時の世界記録の通過は、8分50秒00。

それよりも34秒93遅れていると映像では解説している。

3000mから3400mは、75秒27。

3400mから3800mは、73秒62。

4000mの通過は、12分30秒89。

当時の世界記録は11分46秒00。それよりも44秒89遅れ。

3800mから4200mは、74秒42。

4200mから4600mは、70秒74。

ラスト1周は、63秒62。

5000mは15分22秒60。

4000mから5000mは、2分51秒71。

今から24年前にオリンピックという大舞台で堂々と走る選手がいた。

余裕がある走りで軽々と予選を通過する姿は圧巻だ。

日本の選手が世界の強豪相手に一歩も引かずに果敢に攻める走りをしている。

今のジュニア世代の選手は、そんな光景を見たことがないだろう。

この映像には、学べるものが沢山ある。

今の実業団選手に世界記録保持者相手に臆することなく走れる選手が何人いるだろうか。

やはり、新谷仁美選手一人しか頭に思い浮かばない。

こちらは、ラジオ解説になるが、志水さんが決勝で4位になる瞬間を実況している。


(アトランタオリンピック 陸上女子5000m決勝 by taka200009)

優勝は、中国の王軍霞15分00秒。

日本の志水見千子さんは、15分09秒05の日本新記録で第4位。

ラストの直線で3位の選手を猛烈に追い上げたが惜しくもメダルに届かなかった。

あと一歩、僅かな差でメダル獲得を逃したが、本当に凄いレースだった。

ラストで置いて行かれるのではなくラストで逆に追い上げる強さが志水さんにはあった。

あまり知られていないが、志水さんは1500mを4分13秒で走るスピードを持っていた。

中距離選手として専門的な練習しなくても、いつでも、それくらいの記録で走れた。

もう一度言うが、それは、今から20年以上前の話である。

(現在、志水見千子さんは、東京メトロ陸上部の監督をしている)

あれから20年以上が経過しているが、1500mを4分13秒で走れる選手が何人いるだろうか。

5000mを15分09秒で走れる選手が、現在、何人いるだろうか。

先日の日本選手権5000mは、決勝1本のみのレースであったが、記録は15分05秒。

これで本当に日本の長距離界は進化しているのだろうか。

新谷仁美選手だけが世界の進化についていこうとしているように感じてならない。

現在の日本の女子長距離界は、中学・高校の頃がピーク。

実業団に入ってからは、ピタリと成長が止まってしまう選手が9割近いというのが現実だ。

高校を卒業してからが勝負。高校卒業後、本格的に成長して世界へと羽ばたく。

そういう選手の誕生には、近年の育成環境は相応しくなかったのは明らかだ。

2020年は新型コロナの影響で例年通りのシーズンインが出来なかった。

その分、秋以降の大会で好記録が出ている。

今だからこそ、世界の舞台でも堂々と戦える姿を中高生達に見せて欲しい。

過去にも世界を相手に戦った選手がいることを教えて欲しい。

そういう教育・育成の方法も今の時代にはマッチしている。

「先入観さえ無くせば日本人でも世界で戦える」

映像を見せて視覚的に教えることがジュニア選手の育成には役立つ。

知らぬ間に植え付けられてきた世界との大きな壁を無くすきっかけになる。

日本陸連やJOCがジュニア選手育成プログラムに取り入れてくれることを期待したい。

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