一部のメディアへ問いたい。
何故、力の無い日本人選手を過剰にもてはやすのか?
現在、メディアを含めた陸上関係者と国民との感覚には大きなギャップがある。
「〇〇2世に期待!」
「ニューヒロイン誕生!」
「日本記録更新!1億円ゲット!」
などと煽ってみても国民は冷めた目で見ているのが分からないのだろうか。
日本には駅伝・マラソンファンは沢山いる。箱根駅伝も東京マラソンも人気は抜群だ。運動をしない人たちの間でも大会後は話題になるし注目もしている。しかし、メダルを期待しているかというと答えは”NO”だ。今のレベルで世界に通用するかどうかを国民は良く分かっている。
日本男子短距離陣には、多くの国民が期待している。その理由として、4×100mリレーが五輪と世界陸上の両方でメダルを獲得していること。そして、これまで見たことのない9秒台という世界を見せてくれていること。タレントが揃っているのも楽しみのひとつだ。
桐生祥秀、山縣亮太、サニブラウン・ハキーム、多田修平、飯塚翔太、ケンブリッジ飛鳥、そこへ、昨年のアジア大会200m優勝の小池祐貴が加わってくる。勢い的には、小池が一気に9秒台を出す可能性さえ感じられる。次に誰が9秒台を出すのかを考えただけでワクワクすると期待している国民は本当に多い。
しかし、マラソン選手への期待は、明らかに薄い。下記は、4月7日に行われたパリマラソンの結果である。
【2019 Paris Marathon Result】
〜Men's Top10〜
1. 2:07:05 Abrha Milaw (ETH)
2. 2:07:25 Asefa Mengistu (ETH)
3. 2:07:29 Paul Lonyangata (KEN)
4. 2:07:46 Morris Gachaga
5. 2:07:58 Barselius Kipyego
6. 2:08:14 Plat Arikan
7. 2:08:31 Yitayal Atnafu
8. 2:09:14 Morhad Amdouni
9. 2:11:53 Hillary Kipsambu
10. 2:11:53 Nicolas Navarro
〜Women's Top10〜
1. 2:22:47 Gelete Burka (ETH)
2. 2:22:52 Azmera Gebru (ETH)
3. 2:23:35 Azmera Abreha (ETH)
4. 2:23:41 Clemence Calvin
5. 2:23:53 Sally Chepyego
6. 2:26:04 Pascalia Kipkoech
7. 2:26:48 Zerfie Limeneh
8. 2:42:44 Severine Hamel
9. 2:46:40 Gabriela Trana
10. 2:47:53 Anais Quemener
飛び抜けて速い選手はいないが勝負強い選手達が複数人いることは良く分かる。パリもボストンも極めてタフなコースだ。ロンドンやベルリン・東京のような高速コースではない。しかし、男子では2時間7分台の選手はゴロゴロいる。女子も2時間22分~23分の選手は山ほどいる。
近年、日本国内のメジャー・マラソンのコースは、記録が出やすい高速コースに変更されている。その高速コースでも海外選手に圧倒されているのが現状だ。日本人が優勝する大会には、世界のトップクラスは出場していない。出場していたとしても「本気」では臨んでいない。ビジネスとしてお金を稼ぐために大会側からオファーを受けたから走っているだけである。
日本国内の大会は、市民ランナーのマラソン人気に便乗して大会が盛り上がっているように見せているだけと言っても過言ではない。
東京マラソンのように外国人選手がガチな勝負をすると1㎞以上の大差がつく。表彰式の際、小池都知事がポケットに手を突っ込みたくなるのも仕方ない。「市民ランナーの盛り上がりは大変素晴らしいけど、日本を代表するエリート選手達は全然歯が立たないじゃない。」そう内心思ったとしても、それは当然の感想である。同じ思いは多くの国民が抱いている。実際に全く歯が立たないのだから。
男子選手の中で唯一、世界と戦える力を持っているのは「大迫傑」ただ一人である。彼は、世界との差をリアルに感じられる環境でトレーニングをしているので自分が何をしなければならないのかを理解している。日本の実業団の「温室育ち選手」とは意識の高さが違う。
女子選手に至っては、今現在、世界レベルの選手は皆無である。今の選手達のメンタリティーと実力では到底世界の舞台で勝つことなど出来ない。有森裕子、高橋尚子、野口みずき、鈴木博美、千葉真子、渋井陽子、土佐礼子、これらの選手が活躍して以来、本物のスター選手は一人として現れていない。
大迫傑選手並みの潜在能力を持っている女子選手は、一人だけいる。世界レベルで走れる可能性がある選手、それは新谷仁美選手だ。彼女くらいのスバ抜けた素質がないと世界では戦えない。これも紛れもない事実である。新谷選手の可能性については別途記事にするが、兎に角、男女ともに力不足なのは、今となっては、どうにもならないだろう。
今の状態では、東京五輪マラソンレース当日、想像以上の猛暑となってアフリカ勢が完走を諦めてくれたら、やっと下位入賞が見えてくるかもしれない。しかし、それは期待できそうにない。欧米選手の中には、暑さにメッポウ強い選手がいる。また、アフリカ勢・中東勢にとっても生活環境が整っている日本での最終調整は「利点」になる。世界一、環境が整っていて、ストレスなく大会を迎えられる日本は、日本人だけではなく、世界中の参加者にとって「ベストな体調を作りやすい環境」であるのは間違いない。東京五輪で日本人だけが有利になることはない。
この20年、選手の育成が出来ていない根本的な理由は、勝たせることが出来る指導者がいないことだ。小出氏、藤田氏、鈴木氏のように世界で活躍できる選手を育成する指導力を持った指導者がいない。それが全ての原因である。
東京五輪の長距離種目では、アフリカ勢は勿論、ヨーロッパ勢も活躍するだろう。アメリカ勢も必ず上位争いをするはずだ。現状は、日本だけが置いて行かれている。この状況を、どれだけ真剣に考えているだろうか。
多くの実業団チームが、毎年同じようにアメリカで合宿をして、海外のレースに参戦して、所属企業には、なんとなくやっているように見せているだけで実際には数千万円の経費を使ったのに見合った結果は出ていない。のんびりと海外合宿をして「マイルを稼ぎ」「ゴルフ」をして「ショッピングモールで買い物」をしていては、危機感など感じられる訳がない。
長距離チームコーチ陣たちには、短距離チームコーチ陣の爪の垢を煎じて飲ませたいものだ。
日本長距離界は進化しているか? 〜その1〜