陸上界にある間違った常識のひとつが「ロード練習をすると故障する」という説。

特に中高生の部活顧問や親が道路を使った練習に抵抗感がある雰囲気がある。

結論を言うと道路を使った練習をしても故障するリスクは増えない。

むしろ、ロード練習の方が短期間で効率良く脚力強化ができる。

しかし、この場合に大事なのは「練習効果」と「故障のリスク」を分けて考えること。

更に、ほぼ初心者の一般生徒と本格的に練習する競技者を分けて考えることも大事な点。

何をすれば足を痛めるのかを科学的な目で分析した過去の事例を前提として話をしたい。

科学的に考えた場合、一般的に足に優しいとされる柔らかい路面は故障のリスクが高い。

逆に一般的に足に負担が掛かり故障のリスクが高いとされるロード練習はリスクが低い。

最も故障のリスクが高いのは、疲労回復に良いとされる「芝生」でのトレーニング。

踏み込んだ際に地面からの反発力を受けられずに踏み込み過ぎてしまうのが理由。

踏み込んだ際に地面からの力の跳ね返りを受けることによって加速力は増す。

しかし、芝生では地面からの反発力を受けられずに力は吸収されてしまう。

疲労回復の一環としてリラックス走やLSDで芝生練習は行われている。

しかし、毎日芝生を使って走っていては大きな故障を招きかねない。

それは人工芝でも同じである。頻繁に走らせていると危険が伴う。

実際に競技者人生を終わらせるような大きな故障も起きている。

駅伝強豪の中には、学校の敷地内に人工芝のコースを完備している学校もある。

そこでのウォーミングアップや距離走を頻繁に行っていると故障しやすい脚になる。

骨は硬い地面を走ることによって強度が増す。路面が硬いから強くて壊れない脚になる。

逆に柔らかい路面を一年中走り続けている選手の骨は数か月で軟化してしまう。

足の骨は着地時に受けた衝撃で起こる微振動によって強度が増す。

衝撃を受けることなく力が吸収されてしまうと骨は軟化する。

その仕組みを理解せずに「足に負担が掛からないから…」と言う指導者は知識不足。

疲労骨折しやすい選手の中には監督の指示で人工芝ばかり走らされたという声も多い。

骨密度の低い選手の特徴として一度もロード練習をしたことがないというケースもある。

「道路を走ると故障する」という誤った認識が常識となっていることの弊害が出ている。


(【武井壮】ランニング スプリント  ダッシュ 物理学的に気をつけるべきこと。ビクン グーン バーン【切り抜き】【理論】by 武井壮ビターンの王国)

あるジュニアクラブチームは、ロード練習を主体に行っていると聞いた。

「路面の凸凹や起伏を走ることによって地面を捉える感覚が良くなるのが理由」

「また、常に微妙な変化がある路面を走らせることで足底や足首周辺部の強度が増す」

「体重と練習強度(スピード)の比率の見極めさえ正しく出来ていれば故障は起きない」

ロード練習を多様する狙いをきちんと説明できるなら選手も安心して練習に打ち込める。

それに加えて近年進化が著しいシューズ革命によって足への負担は益々軽減されている。

子供に陸上競技をさせている親であるなら最低限必要な知識は学んでおくべきだろう。

それが出来てこそ怪我なく安心して陸上競技に専念できる環境が整ったと言える。