日本の選手が抱える潜在的な問題のひとつに常識にとらわれ過ぎているという点がある。

③常識を打ち破る
日本の選手が合宿や遠征へ行ってロードを使用してのトレーニングをする際、スタッフは、まず何よりも先に練習コースの距離測定をする。そして、距離走やインターバルトレーニングを行う為に出来るだけピッタリと距離測定しようとする。その理由は、「このコースの距離は本当にあっていますか?」と選手から指摘されるのを避けるためだ。選手には、様々なタイプがいる。言われたことを素直に信じて「はい、分かりました」と実直に練習する選手がいれば、殆ど何も考えずに「まっ、いいかぁ」と良い意味で大雑把な性格の選手もいる。1秒や1メートルにこだわり全てに超細かい選手もいる。特に練習記録に対して神経質になる選手は少なくない。そういう選手は、1㎞なら1㎞をピッタリと計測していないと「記録が違います!」とガミガミ文句を言って来ることもある。日本国内ならキロメートル単位で距離測定ができるから、まだ良い。問題は、海外遠征をした際の適応力。臨機応変に海外環境に対応できる力があるかどうか。海外では、距離表示がマイルの場合もある。それを「日本と同じようにキロメートルじゃないと感覚が分からない」と言って「1㎞単位に測定し直して欲しい」と言ったり、誤差が生じないように「ピッタリと距離を測って欲しい」など言ってくる。そんなことに拘るのは、日本人選手だけだ。例えば、1㎞のタイムトライアルをする際。その距離が1030mであったら選手は血相を変えてスタッフに食ってかかる。キレ気味に「ちゃんと計測してくれなきゃ練習する気にならない!」と言ってくる。そもそも、その考えが間違っている。自分の固定概念に捉われている。1000mが1030mであっても何の問題もない。1100mでも1200mでも全然関係ない。「一定の距離を速く走った方が勝ち」。それが陸上競技の根本である。距離が何メートルであっても練習に支障をきたすことはない。陸上競技は、スタートからゴールまでを他者よりも速く走れる選手が勝者となる。その考え方さえ正しく理解していれば、トライアルの距離が1030mであっても、その距離での自己最高を作れば良い。前回よりも速く走れば良い。誰よりも速く走れば良い。その上で参考として、あとから1000mに換算した記録で自分の調子を把握すれば良いだけである。インターバルも同じ。ピッタリと1㎞である必要などない。一定距離を安定して繰り返し行って持久力を養えば良いだけである。何も難しくないし、どんな状況下でも思考に柔軟性を持たせて臨機応変に走れば良いだけである。それが、出来てこそ世界のトップ選手達と肩を並べて走れるようになる。もうひとつ。日本の選手は、キレイに整備された舗装道路を走るのに慣れているので路面状況が悪いコースでは、パフォーマンスが著しく低下する。不整地やクロカンは、ビックリするくらい苦手。「走り難い」「自分には合わない」などと言って不整地での練習を避ける。いつでも、どこでも、どんな状況下でも言い訳を用意することなく、その瞬間に最高のパフォーマンスを発揮する思考力を養う。日本人に分かり易い距離表示であるとか、走る環境が綺麗に整備されていなくては嫌だとかをいちいち気にしないおおらか心を養う。練習に対する固定概念を打破し、世界で戦うための意識改革を行う。海外選手と同じ感覚を持つ。日本人の常識を打ち破る。それが未来のメダリストになる為の大きなカギとなる。

〜「④感覚を麻痺させる」へ続く〜