中学生から実業団選手までが「勝負シューズ」として愛用しているナイキ厚底シューズ。

「記録を狙うならこれしかない!」という信頼感が多くの選手に力を与えている。

陸上競技者だけでなく、多くの市民ランナーにも広く使用されている。

しかし、市民ランナーの中には「上手く履きこなせない」と愚痴をこぼす人もいる。

「上手く接地できなくて一定のテンポで走れない」

「フォアフットを意識し過ぎてしまい足首が痛くなる」

「クッションに頼ると跳ね過ぎるから逆にチョコチョコ走りになる」

上手く履きこなせないという声の中には、足音への違和感もある。

「厚底シューズを履いて走ると『パタンパタン』という大きな足音がする」

「ギュッギュッギュッっていう乾いた大きな音がするのが気になって仕方ない」

「自分だけプラスチック音のような変な音が立つのが恥ずかしいと思ってしまう」

本来、厚底シューズを履きなれている選手は、殆ど足音がしない。

踏み込み時間が短くて済むので、どちらかと言うと軽快な音がする。

上手く履き慣らしている選手の足音は、とても軽い。

パタンパタンと重たい足音がする人は、シューズが足に合っていない。

軽快なテンポで走れない人は、シューズ選びが間違っているのかもしれない。

大きな接地音がしてしまうのは、正しい接地が出来ていないからだと考えられる。

日々のトレーニングによって脚力が鍛えられているランナーは上手く履きこなせる。

しかし、脚力が伴わないランナーには、厚底シューズの恩恵は受け難いのが現実である。

流行りのシューズを履くことへの期待感は、どのレベルのランナーにもある。

「このシューズを履けば、どんな記録が出るか楽しみだ」

厚底シューズに対する期待度と依存度は、かなり高まっていると言って良い。

その反面、上手く履きこなせないのに無理矢理に履いているランナーもいる。

足が痛くなるのに履く。記録が出ないのに履く。流行っているから履く。

高価な買い物をしたからこそ、今更、履かない訳にはいかないから履く。

市民ランナーには、難しい選択となっている。

ちょっとした工夫で履き易くなるので試してみて欲しい。

まず、上半身は、思い切り前傾すること。倒れるくらい前傾姿勢にしてちょうど良い。

シューズが足を前に運んでくれるのではなく、自ら前傾して一歩を踏み出す意識が大事。

シューズに頼って足が前に出るのを待っている人の走り方は上半身が突っ立っている。

上半身が突っ立ったままでは、シューズの性能を活かせない。

頭のてっぺんから引っ張られるくらいに前方に突っ込んで走ることで高性能が活かされる。

次に大事なのは、きちんと踏ん張ること。

厚底シューズを履いているのに遠慮がちにチョコチョコ走っていては反発がもらえない。

倒れるくらい上半身を前に倒して踏み出した足は、しっかり踏み込んで着地する。

そうすることで地面からの反発力がもらえる。

つま先だけで走ろうとするランナーは、しっかりと踏み込めていない。

足裏の真ん中あたりで踏み込むのが理想だが、踵から着地しても大丈夫。

厚底シューズの性質上、踵から着地しても接地した瞬間にフォアに重心が乗る。

厚底シューズは、つま先着地をしなくても、踵着地でもフォア重心になる。

これを覚えておくと楽に走れるようになるし、厚底シューズの性能をフルに活かせる。

そこでもう一つ意識して欲しいのは、接地時間を短くすること。

強く踏み込めば踏み込むほど反発力が増すので接地時間は短くなるのが当たり前。

「軽快なテンポで走る」というのは、力強く踏み込んだ反発力を活かすという意味である。

それを覚えておけば市民ランナーでもプロランナーのように軽快なテンポで走れる。

もうひとつ付け加えておくと、踵の引きつけを強く、そして、高くすること。

踵を高い位置で力強く引きつけることで推進力が増す。

ビックリするくらいスピードに乗る感覚を味わえる。

それこそが厚底シューズを履く最大の利点。

ダイナミックに走れば走るほど加速力が増す。

普通なら加速力が増すとバテ易くなるのだが、厚底シューズはバテない。

走り込んで鍛えるべき脚力と筋持久力を厚底シューズがカバーしてくれるからバテない。

「チョコチョコ走っていては、厚底シューズの性能を活かせない」

「逆に短距離を走るように頭から突っ込んでダイナミックに走ると性能が活きる」

厚底シューズを履いても記録に結び付いていないランナーには参考にして欲しい。