緊張するなと言っても緊張するのが高校駅伝予選。

一国一強の県は、全国大会に向けての「足慣らし」的な大会となる。

しかし、強豪校が複数あり、毎年のように激戦が繰り広げられる県は話が違う。

これ以上ないくらい緊迫した状況下で「最高の走り」が求められる。

最終区の勝負。ラストスパートで勝敗が決まることも少なくない。

「絶対にブレーキは出来ない」

「自分がブレーキをしたら負ける」

「自分が貯金を作らなければならない」

そんな気持ちを持ったまま大会前の数日を過ごすと必要以上に緊張してしまう。

指導者も「おまえの走りに懸かっているからな!」と声を掛けたりもする。

決して悪気はなく、気持ちを鼓舞しようとしての声掛けだと思うが、この一言はキツイ。

チームで戦う駅伝を「おまえの走り次第」と言ってしまうことで選手の体調は一変する。

必要以上に責任を負わせると選手の調子は、どんどん落ちていく。

下痢をする。嘔吐する。発熱する。不眠症になる。足に痛みが出る。

ずっと調子が良かったのに急にカラダが重く感じて自分が自分でなくなってしまう。

そうして自滅してしまうチームを幾つも観てきた経験から言えること。

試合前に体調を崩さない最も有効な方法。それは・・・

全力疾走をさせて100%の力を出させないこと。

指導者は、選手の調子を確認したくて試合前に何度もトライアルをさせたりする。

安心材料を作りたくて何度も何度もハイペースな練習をさせる。

選手に自信を持たせる。

チームの仕上がり具合を確認する。

自分達の調子が良いことを確認し合う。

一番調子の良い選手をメンバーとして使う。

メンバー選考に公平性を持たせる為にトライアルをする。

様々な理由づけはあるだろう。

しかし、試合前に何度もカラダを追い込ませることは、大きなリスクを伴う。

選手は、調子の良さをアピールするあまり知らず知らずのうちに疲労が蓄積してしまう。

筋肉の疲労ならケアすれば回復は可能だが、見落としがちなのは内臓疲労。

定期的に血液検査をして調子の波を科学的データに基づきチェックしているチームは良い。

だが、そうでないチームは、見えない疲労、自覚がない疲労に対して対応が出来ない。

慢性的に蓄積した内臓疲労は簡単には回復できない。

指導者もチームメイトも家族も内臓疲労には気付かないことが多い。

「調子が良いと思って走りだしたら1㎞もしないうちに足が重くなってしまった」

「普段ではないくらいに呼吸が上ってしまい酸欠状態になってしまった」

「足に力が入らなくなり、歩くようなペースになってしまった」

それらはすべて内臓疲労が原因となっていることが多い。

指導者は勿論、選手本人でさえも気付かないのが内臓疲労の特徴だ。

内臓疲労があるところに極度な緊張状態が加わると急性貧血になることもある。

鉄剤注射をしているチームは、内臓疲労・貧血などが無いので疲れ知らずで走れる。

しかし、鉄剤注射を打っていないチームは、慢性疲労にも貧血にも気付かない。

仰向けに寝た状態でお腹に手を当てて下腹部(腸のあたり)を軽く押してみる。

柔らかく弾力があってグーッと押すことが出来たら問題はない。

逆に、少し押したらカチカチに硬い壁にあたったように感じる場合は注意が必要。

軽く押しているのに差し込むようなシャープな痛みがある場合は、更に注意が必要。

腰痛や広背筋痛だと勘違いしているが、実は、かなりプレッシャーが掛かっている。

逆立ちをする。鉄棒にぶら下がる。足を高くして寝る。お腹のマッサージを受ける。

そういう対処法を用いてカラダの奥底に蓄積している疲労の回復を優先させるべきだ。

大事なのは、調子のバロメーターを計るのは、練習記録では無いということ。

練習で良い記録で走れたから調子が良いのではない。

監督が求める設定タイムで走れたから快走出来るのではない。

足の筋肉だけでなく内臓もスッキリと柔らかい状態であることが駅伝での快走に繋がる。

そういう調子の見極め法もあると考えて大会前の体調管理に役立てて欲しいと思う。