「箱根駅伝は、中止になる可能性が濃厚」

これは、スポーツ関係者とメディア関係者の言葉だ。

理由は、シンプルである。

「箱根駅伝だけの問題だけではないから」

通常、箱根駅伝開催は、1月2日と3日。

その前後に国内の主要駅伝が行われている。

・12月 全国中学駅伝(滋賀)
・12月 全国高校駅伝(京都・NHK)
・12月 富士山女子駅伝(静岡・フジテレビ)
・1月   ニューイヤー駅伝(群馬・TBS)
・1月   箱根駅伝(東京神奈川・日本テレビ)
・1月   全国女子駅伝(京都・NHK)
・1月   全国男子駅伝(広島・HNK)

いずれも年末年始の風物詩となっている。

箱根駅伝を実施するということは、これら全てを行うことになる。

運営する為に必要な役員・補助員動員数は、2~3万人とも言われている。

「箱根駅伝だけの問題ではない」

この言葉の意味は、こうした背景がある。

そういう背景をよそに箱根駅伝を開催すべきと訴える某有名監督がいる。

「やりたい、やりたい!」
「絶対、やるべきだ!」

そう叫ぶなら、すべての大会の安全対策を万全にするための見積もりを考えたか。

一体いくらの予算を使って安全面の確保と保証をするのか考えただろうか。

大会運営役員・補助員の方々、その家族の同意書を全て揃えられるのか。

中継するテレビ局関係者、報道関係者、スポーツ業界関係者、広告代理店関係者・・・

スポンサー企業や運営に必要な様々な発注業者。

どこをどこまで管理して、監視して、制御できるのか。

最も懸念される沿道の方々のコントロールは本当に出来るのか。

今現在、既に気が緩んでいる状態だから感染状況は深刻化している。

強行開催をして、万が一のことが起きた時のことを想像しただろうか。

例えば、ある区間を走った選手から感染者が出たとした場合。

・その区間を走った選手全員
・付き添いをしたチームメイト
・その区間の補助員
・同じ車で移動した関係者
・同じ宿舎を使用した関係者
・中継場所の敷地の管理関係者
・2週間以内に接触した大学関係者
・家族・友人
・その他、2次・3次的関係者など

たった一人が陽性反応になった途端に大きな被害が広範囲に渡って起こる。

もし、大規模クラスターとなった時の責任は、誰が取るのか。

大会を強行開催したことで感染した方への保証は、どう考えているのか。

箱根駅伝で有名な某大学の監督は、自分一人で責任が取れるのか。

「大会を開催して何が起きても関係ない。自分達さえ満足出来たらよい」

それでは済まされない。

どれだけの人が明日を迎えることへの不安を抱き必死に生活していると思っているのか。

余りにも想像力が無さすぎる。

余りにも自分勝手すぎる。

他人の健康を犠牲にしてでも大会開催を望む合理的な理由は何か。

多くの国民が楽しみにしているお正月の風物詩だからこそ説得力が必要。

日本国民全体に開催の是非をアンケート調査して決めるくらいの覚悟が必要。

不幸な災いが起きる時には、気の緩みや油断が発端となって起きることが多い。

「大丈夫だと思っていた」

「自分達には関係ないと思っていた」

「まさか、本当に起きるとは思わなかった」

決まり文句のように言うセリフを陸上関係者から聞きたくない。

100%の保証が出来ないなら無理な開催はすべきではない。

あり得ない出来事は、強行開催したことで起きる場合が多い。

どんな組織でも、スポーツの世界でも必要なのは、リスクマネジメント。

リスクマネジメントは、組織をまとめる際の鉄則である。

リスクマネジメントに長けているからこそ強いチームを作れる。

無謀なギャンブルをしない戦略を立てられる指導者が、名監督になっている。

「箱根駅伝が中止になっても君たちの努力は無駄にならない」

「箱根駅伝が無くなっても君たちの価値は何一つ変わらない」

「箱根駅伝以外の夢を持って生きていくことの方が将来役立つ」

「駅伝のレギュラーメンバー選びと同じでギャンブルは出来ない」

「自分達だけでなく他者へのリスクがある中では走ることは出来ない」

そう自信を持って学生達に伝えられる指導者こそが本当の名匠である。

箱根駅伝開催について、更に真剣かつ慎重な論議がされることを期待したい。