勝てる選手の特徴として「得体のしれない自信」を持っているという共通点がある。

相手が強いと分かっていても怯まずに戦いに挑む気持ちがある選手には迷いがない。

プレッシャーの根源は、見えない相手に対する過剰な意識反応による平常心ロス。そして、非日常的な空間に包まれた際に起こる自分のポジションロスである。

「自分が何者であるか」を見失うと、いわゆる、頭が真っ白な状態になる。

初めて全国中学陸上に出場する選手は、小学校の時から顔見知りの選手が多い県大会では、余裕で走れる。しかし、普段と全く違った顔ぶれの中に入ると、たちまち、我を忘れてしまうことがある。

「ここはどこ?わたしは誰?」という状態に陥ってしまうことは珍しくない。

サブトラックに行き周囲を見渡した時、自分と同じくらいの記録の選手、あるいは、自分よりも記録的には劣る選手を見ても、それらの選手が、ニコニコ笑いながら堂々とウォーミングアップをしている姿を見ると自分よりも強く見えてしまう。自分も調子は悪くないのに、相手の方が調子良さそうに見える。これが、プレッシャーのひとつである。

心に迷いがあると普段経験したことのないプレッシャーを感じる。一度、迷いを感じたら、それは、止まることなく増長する。迷いの深さに比例してプレッシャーも大きくなる。

「得体のしれない自信」は、武器になる。心の迷いを消してくれる。

「めっちゃ、緊張するけど走れる気しかしない。超楽しみ!」と思考転換ができる選手は、緊張感を「自分の世界(ゾーン)」に入れることでプラスαの力に変えることができる。

大舞台で活躍できる選手は、大抵の場合、「得体のしれない自信」を持っている。だから、緊張する場面でも臆せず、ビッグパフォーマンスをすることができる。

ある現役トップアスリートのトレーナーは、このように分析している。

「得体のしれない自信」は、家庭環境によって育まれる。どのような家庭環境で育ったかによってプレッシャーに強い選手と弱い選手は生れる。

「プレッシャーに強い選手」は、他人と自分を混同しない。

「プレッシャーに弱い選手」は、SNSばかり気にしている。

今は、SNSが盛んな時代なので有名人やトップアスリートとも簡単に繋がることができる。そうすると、自分もそれらの人達と近い存在だと勘違いしてしまう。

「うちの子は、あの〇〇さんとTwitterで友達なんです!」
「あの選手も、この選手も、知り合いです!」

あちこちで、こう話している保護者を良く見かける。

例えば、中学生の子供を持つ保護者は、常にSNSをチェックして有名選手との繋がりに夢中なっている。トップレベルで活躍する選手と繋がることで自分の子供も「同じ位置にいる」と思い込んでいる。

「〇〇さんが、凄い記録を出したよ!」
「あなたも負けられないよ!」
「〇〇ちゃんは、また優勝したよ!」
「大会新だったらしいよ!」
「あなたも表彰台に乗ってる姿をアップしようね!」

SNSで繋がっているだけで、本来は「遠い世界」に居るトップアスリートを身近に感じ過ぎてしまう。自分の子供を「同じ」だと錯覚し、子供に余計なプレッシャーを掛けていることに気付かない。これが、とても大きなプレッシャーになってしまう。

トップアスリートができることを自分の子供もできると錯覚して、それを日々の生活で強要してしまっている。無意識のうちにプレッシャーをかけていることに気付いていない。

大会当日、親は「きっと、トップアスリートのように活躍してくれる」と信じて疑わない。子供は、SNSの世界と現実の世界とのギャップに気付き、プレッシャーを感じてしまう。

このように、プレッシャーを自分で作ってしまっていることがある。

プレッシャーに強くなるには、他人と自分を比較しないこと。情報に無頓着であること。周囲に惑わされず、自分を客観視できる状態を維持すること。「スマホ」と距離を置くこと。

スマホばかり気にしていると、自分の立ち位置を冷静に見ることができない。不必要な情報に気持ちが左右されてしまう。自分が何者であるかを確立できない。常に心が安定しない。それでは「得体のしれない自信」は養われない。

自分自身を確立できているトップアスリートは、自己表現しながら気持ちのコントロールもできている。自分の立ち位置を見失うことはない。情報に左右されることもない。

しかし、中学生は、そこまでの確固たる自分を確立できていない。トップアスリートと同じことはできない。自分の子供に期待するのは必要なことではあるが、それを親の自己満足で子供に強いてはいけない。トップアスリートと同じことを求めてはいけない。SNSで自分を表現するのは、中学生には、まだ早い。それが、結果的に余計なプレッシャーとなっていることに気付いて欲しい。

プレッシャーに強くなる為には、まずは、スマホと距離を置く。

これを頭に入れて、これから始まる、全中陸上やインターハイに臨んで欲しい。

 プレッシャーに強くなる方法

プレッシャーに強くなる方法②