これが、本当の日本選手権である。

最低でも、このレベルでレースをしないと意味がない。

今年の日本選手権は「学生の認識の甘さ」と「実業団選手の意地」が出た大会となった。

「授業料を払っている学生」と「給料を貰っている実業団選手」のプロ意識の違い。

今年のレースは、昨年までのような「レベルの低いレース」ではなかった。

その一言に尽きる。実に気迫のこもった、闘志あふれる好レースだった。
 (決勝 男子1500m決勝 日本選手権陸上2019 by 陸上Track&Field) 

昨年の優勝タイムが、3分52秒台。一昨年が、3分49秒台。高校生レベルである。それなのに「王者」と大袈裟に称賛したメディアにもダメ出しをしなければならない。

学生達が、インカレ同様にスローペースになると思い込んでいたのは、安易に想像がつく。そして、引っ張る選手がいたら、それについていこうと身構えていたのも最初の400mの走りを見れば分かる。しかし、実業団選手達は、「わざと」2周目を落とした。400mから800mを61秒。この時点で学生が勝つ確率は、殆ど無いに等しくなった。敢えて、言わせて貰うが、飯澤、舘澤、舟津は、自分達でレースをつくる意気込みが足りなかった。レースの主導権を3人で握り合って勝つためのレース運びを着実に行うべきだった。400mから800mを56〜57秒に上げていたら学生達に勝機が生れたはずだ。実業団選手の術中にハマった結果、学生陣は、惨敗に終わった。

学生選手達は、実業団選手を上手く利用して走るレースプランを緻密に練る必要があった。何故なら、今年の実業団選手の顔ぶれが、昨年までの格下選手ではなく、「タフな走り」ができるトップ選手が集まったからである。それを理解して上げ下げの激しいレースにも対応できるプランを立てる必要があった。

力のある実業団選手達が、ガチ勝負をしてきたのである。給料を貰って走っているプライドと実業団選手としての意地が、自信に満ちた走りから伝わってきた。わざと2周目を61秒まで落としてから、3周目を57秒まで一気に上げる展開に、学生達は全く対応出来なかった。59秒ー61秒ー57秒ー42秒。一旦、ラップを落としてから急激なビルドアップをして3分39秒でゴールしている。ハッキリ言って、日本記録が破られるのは、もう時間の問題だ。優勝した戸田、2位の松枝は、3分37秒台で確実に走れる力がある。そこに割って入るのが、飯澤と舟津。この二人が、再び、実業団選手を脅かす勢いを取り戻せば、間違いなく、日本記録は更新できる。その時に、誰が、先頭でゴールをするかが、本当に楽しみである。

因みに男子の3分30秒台は、女子の4分一桁に相当する。現在の女子のレベルは、そこまでには、至っていない。非常に大きな開きがある。しかし、卜部蘭の2冠により、光が射してきたのは間違いない。800mを2分02秒で走る力があれば、1500mでも4分一桁の記録が出ても不思議ではない。

大学の記録会ではなく、日本選手権という大舞台で記録が出たことが大きな収穫であった。男女ともに、勝負は、この2年だ。2年以内に男女の800mと1500mの日本記録更新を自分が達成するという気持ちでチャレンジしてくれることを期待したい。