実は、このレース。近年、稀に見るショッキングなレースとなった。

塩尻和也選手が、まさかの失速。それも、障害をまたいで跳ぶ姿は痛々しかった。

ラスト1周は、完全に脚が動かなくなってしまった。
 (男子3000m障害物決勝 第103回日本陸上競技選手権大会 by 日本陸上競技連盟) 

こういうレースになってしまう原因は、ふたつ。

1.独走状態に持ち込めず焦りカラダが硬直した
2.横並びで走ることで想像以上に脚を使った

基本的には、両方が原因と考えるのが妥当である。

2000mのあたりでは、既に、脚に力がなく、障害の跳び方が不安定で着地するたびに大きな衝撃を受けていた。あの跳び方では、脚へのダメージが大きくエネルギーを消耗していた。

もし調子が良くないのを承知の上で記録を出す為に何度も先頭に立ったのであれば、それは、素晴らしいことだ。しかし、あんな風に崩れてしまうのなら、力をセーブすべきだ。

負けにも様々な負け方があるが、あの負け方、いや、もう勝ち負けではなく、ただ単に失速している走りでは、自分の体調をコントロール出来ていない危険性さえ感じる。

今回の走りは、本当に選手生命を脅かすような走りだった。ああいう失速の仕方は、本当に危険であることをチームスタッフは、真剣に考えるべきである。走り込み不足とか調整に失敗したとかいう問題ではない。ああいう大失速は、選手生命を終わらせてしまうほどの危険なサインであると真剣に考えて欲しい。

女子短距離の福島千里、市川華菜は、恐らく自分でも何故走れないのかが分かっていない。女子800mの北村夢も、体操の内村航平、白井健三などの選手達も・・・今まで当たり前に出来ていたことが、ある日突然、出来なくなる。高橋尚子の引退レースとなった名古屋国際女子マラソンのように、カラダが動かないまま普通では「あり得ない失速」をしてしまう。そんな瞬間が、突然やってくる。

塩尻選手は、まだ若い。体力の限界に達しているとは考えにくい。だからこそ、ああいう「あり得ない失速」は、あってはならないし、冷静に原因を分析する必要がある。何でもないなら、それでいい。安心材料が増えることが大事だ。

塩尻選手ほどの選手が、何故、あそこまで大失速したのかをチームスタッフは、慎重に分析する責任がある。油断とか調整不足とかでは片付けてはいけない。来年の東京五輪には必要な人材の一人であるからこそ、今回の原因追及に全力で臨んで欲しい。