全国各地で熱戦が繰り広げられている高校総体予選。

全国的な強豪校ほどチームの調子を秋以降に上げる流れができているので、高校総体予選の結果だけでチームの戦力を判断することはできない。チーム事情によって様々な背景があるはずだ。高校生といえども無限の体力がある訳ではないから3年間エンジン全開で突っ走ることはできない。割り切った考え方をする高校は、駅伝のみに全力で臨むこともある。チーム戦略次第でトラックシーズンの結果は、全く違う。それぞれの現状と思惑を探りながら戦力分析をしてみたいと思う。

東京都高校駅伝は、順天 vs. 錦城学園 で紹介したように過去にない激戦が予想される。選手個々の記録的には、互角といって良い。

では、高校総体東京都予選を終えて選手の状況を見てみよう。

【女子800m決勝】
1.2:08.64 ヒリアー 紗璃苗(明星3)大会新
2.2:10.33 鈴木梨々亜(都立南平3)
3.2:10.83 岡本愛梨 (東京2)
4.2.11.04 南 日向 (順天1)
5.2:12.46 井上莉里加(都立東大和3)
6.2:12.48 川島琴美 (白梅学園3)
〜〜以上、関東大会進出〜〜
7.2:12.76 島貫恵梨子(錦城学園2)
8.2:16.32 鈴木美呼 (都立板橋2)

【女子1500m決勝】

1.4:25.18 増渕祐香 (錦城学園3)
2.4:25.32 保坂晴子 (錦城学園3)
3.4:27.10 道下美槻 (順天3)
4.4.29.23 南 日向 (順天1)
5.4:29.34 鈴木日菜子(城西2)
6.4:29.51 木島あすか(東京2)
〜〜以上、関東大会進出〜〜
7.4:30.99 坂口愛知 (錦城学園3)
8.4:35.87 長山優愛 (順天3)

【女子3000m決勝】
1.9:25.07 増渕祐香 (錦城学園3)
2.9:32.18 保坂晴子 (錦城学園3)

3.9:37.16 村上礼乃 (城西3)
4.9.41.28 足立涼美 (順天3)
5.9:41.65 三輪南菜子(錦城学園2)
6.9:42.52 木島あすか(東京2)
〜〜以上、関東大会進出〜〜
7.9:49.42 会田佳世 (順天3)
8.9:57.31 塩崎七海 (城西3)

<両校の関東大会進出人数比較(進出者名)>
     〜順天〜      〜錦城学園〜
800m    1(南)        
1500m  2(道下・南)    2(増渕・保坂)
3000m  1(足立)      3(増渕・保坂・三輪)

今回、素晴らしいパフォーマンスを見せた錦城学園の勢いと強さは関東大会でも他校を脅かすに違いない。昨年インターハイを経験している増渕・保坂の2枚看板が好調を維持。インターハイ出場へ向けて順調な仕上がりといえる。昨年まではダブルエース頼みという印象があったが、今年は、同期の坂口、一年後輩の三輪・島貫、新人の塩入などが着実に力をつけている。他にも力のある選手が控えているので、今の勢いからして、そう簡単には崩れないチームだと言える。昨年は記念大会枠での全国高校駅伝出場だった。今年は、一発勝負。確実に優勝して全国への切符を掴みたいという気迫が伝わってくる。今年代表になれば、東京都の過去最高順位(全国10位)を更新する可能性は高い。

一方の順天は、3年生の3枚看板が、足並みを揃えて仕上がらなかった。それが錦城学園との差になっている。長山・道下・会田の3枚看板が本来の調子を取り戻せば錦城学園には全く引けを取らない。3000mで4位に入り都大会を勝ち抜いた足立は、実際にはチーム5番手の選手。その選手が奮起している姿は、主力の調子が上らないチームの支えとなっているはずだ。3000mを走れる選手は他にもいる。3年の矢野・塩野、そして、スーパー新人の南の存在も忘れてはならない。東京都でなければ1年生で800mと1500mの2冠を達成していた。南の走りは間違いなくチームに活力を与えている。他にも力をつけている新人選手もいる。主力全員が足並みを揃えた時の順天は、全国高校駅伝でも8位入賞する力がある。

<東京都高校駅伝優勝への条件>
①10月までに5000m16分10秒以内の選手を3人揃える
②その他に4000m13分10秒以内の選手を3人揃える
③ロードへの適正を養う
④マッチレースに強くなる
⑤5区間、それぞれのスペシャリストをつくる

<東京都高校駅伝展望〜5月時点〜>
順天・錦城学園の2強プラス城西という構図は、今年も変わらない。現状では、2強が抜けている感はあるが、実は、城西が背後からプレッシャーを掛けているから2強が進化を続けているとも言える。万が一、1区で2強がもたつくと、その隙をついて城西が先頭を走ることも十分にあり得る。それくらい秘めた力が城西にはある。選手補強とチーム強化は2強に引けを取らない。次に続くのが東京高校。こちらも選手補強と強化は順調に進んでいる。短距離だけではないところを見せたいところだ。その次に続くのが、都立上水、東京実業、駒大など。ここからは、3000mを10分台で走れる選手が何人いるかで判断できる。1区6㎞と5区5㎞を確実に走れないと駅伝はチーム力が安定しない。1区と5区を走るには、3000mを安定して走る力が必要だ。そういう点では、都総体3000m決勝に残った選手がいる学校が、都高校駅伝でも関東大会の切符を掴むだろう。混戦は必至だ。注目しているのは駒大。3000m決勝で一年生が14位(10分08秒)と好走した。他校の選手の多くが1500mと兼ね出場しているため、どの選手も疲労困憊の中、ここがチャンスとばかりに元気な走りをした。毎年1区での遅れが大きかった駒大。3000mを9分台に近づく記録で走れる選手の出現は朗報だろう。フレッシュな一年生がいる効果で3000mを走れる選手を増やすことができれば関東高校駅伝の切符が近づく。どの高校からも目が離せないシーズンになりそうだ。